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【質問】
 國井先生のセミナーや著書で「トラブルの94%は設計責任」と何度も学びました。実は、この文言が当社にぴたりと当てはまっており、驚いています。その改善方法として、第68回のコラムが大変役立ちました。試作のあり方を検図の視点から改めて認識することができたからです。では、試作以外の他の2つ、つまり、設計書とFMEA(故障モード影響解析)に関しても検図の視点からの詳細説明をお願いします。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】
 第68回は、設計工学の視点から検図を主体とした「試作」の意義や、検図との関連性について解説しました。では、ご要望の通り、今回は設計書とFMEAを検図の立場で再認識してみましょう。

 「またこれか」と思う読者もいるかもしれません。しかし、「トラブルの94%は設計責任」という内容に関する問い合わせが、私の事務所のWebサイトに設けた無料質問コーナーに急増しました。そこで、もう一度振り返ってみたいと思います。

 なぜ問い合わせが急増したのかについては調査していません。しかし昨今、日本を代表する自動車メーカーや自動車部品メーカーにおける社告・リコールが、収束するどころか増加傾向にあります。また、そのリコール内容が技術的に低レベルである場合や、人身事故につながり得る重い内容であることなどが原因の1つではないでしょうか。その突破口を見いだそうとしている技術者の増加が問い合わせの増加として現れたと、私の事務所では推定しています。

トラブルの94%は設計品質が原因

図1●設計に起因する94%の品質トラブルの未然防止方法
図1●設計に起因する94%の品質トラブルの未然防止方法
(作成:國井技術士設計事務所)
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 図1は、設計品質トラブルの割合を、時計盤を模した円グラフで表したものです。「トラブルの94%は設計責任」というのは、もっとストレートに言えば、製造業におけるトラブルの94%は設計部や設計者が要因であるということです。従って、トラブルを未然防止するには、設計そのものの仕組みや組織変更といった設計改革を実施するのが最も効果的です。

 それでは、設計品質トラブルに対する未然防止方法を、検図プロセスを踏まえて解説しましょう。

[1]時計の0~6時:トラブルの約半分を占めるこの部分は、設計書で未然防止を図ります。私の事務所は「簡易設計書(DQD)」を使うことをクライアント企業に勧めています。設計書を審査することを設計工学上、設計審査と呼びます。この設計書を基に設計審査した結果と図面との照合が、この部分における検図です。特に、却下されて再審査によって承認された箇所は、重要検図項目に相当します(詳細は後述)。

[2]時計の6~9時:この部分は「試作」におけるトラブルです。「試作時100倍」という設計概念を第68回で紹介しました。一品物ではない量産品では、試作時における1台当たりの試作費は100倍かかるというものです。それほど試作という設計プロセスが重要なのです。これを検図に生かさない手はありません。試作費に関する「費用対効果」は、検図に生かされて始めて発揮されます。つまり、試作評価の結果が図面にフォローされているかどうかを確認することが、この部分における検図です。

[3]時計の9~12時:この部分はFMEAとその審査でトラブルを未然に防ぎます。私の事務所は、クライアント企業に「シンプルFMEA(3D-FMEA)」に導入しています。[1]の設計審査と同様、FMEAを基に設計審査した結果と図面との照合を、この部分の検図と呼びます。特に、却下されて再審査によって承認された箇所は、重要検図項目に相当します(詳細は後述)。