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【質問】

 先日、國井先生のオンラインセミナーでシンプルなFMEA (故障モード影響解析)とFTA(故障の木解析)のセミナーを受講した自動車部品メーカーの設計者です。そのセミナーで先生は、①設計者用チェックリストがない企業は論外である、②チェックリストが多すぎると設計無責任となる、③チェックリストなきFTAで十分である、と解説していました。重要な点だと思いますので、もう一度教えてください。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】

 まず、私の事務所はクライアント企業に次のように指導しています。
④チェックリストなき企業は論外(上記①と同じ)。
⑤チェックリストは出図時に使用するのではなく、設計中に使用する。
⑥できればチェックリストは全廃し、FTAに置き換えること。

 まず、④と⑤を以下で復習してください。

④:第62回「門外不出の樹脂設計チェックリストを公開」

⑤:第63回「勝ち組の設計は出図チェックリストをこう使う」

 設計コンサルタントの立場で言うと、いつまでたってもトラブルが減少しない企業には、1つの共通パターンが存在します。それは、トラブルの再発防止策の中に、「検図における出図チェックリストの見直しと充実化」という対策が存在することです。しかし、これでは何の根拠もなく、ただ「頑張る!」と言っているのと同じです。

 設計工学の立場で言うと、チェックリストは出図時の検図ではなく、フロントローディング開発で使用します。具体的に言えば、設計中に使用するものです。

 では、今回のコラムは⑥について解説しましょう。

設計者に必要な修業のステップ

 図1は、本コラムの第41回の「修業していない設計者にFMEAは無理」にも掲載しました。最上段に位置するFMEAはトラブル未然防止のための開発ツールです。本来は世界でたった1つしかないツールですが、日本企業には数多くの“方言”が存在します。

図1●FMEAの前にはFTAと設計書と「匠のワザ」がある
図1●FMEAの前にはFTAと設計書と「匠のワザ」がある
(作成:國井技術士設計事務所)
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 その代表例が複雑なFMEAで、もう1つは合体FMEAです。合体とはFMEAとDR(デザインレビュー)を合体、もしくは、FMEAとこの後に解説するFTAの合体です。私の事務所では、どちらも「百害あって一利なし」の「ガラパゴスFMEA」と呼んでいます。なぜなら、日本企業の社告・リコールが一向に収束しないからです。そのトラブル内容には人身事故や人命に関わる重大なものも含まれています。このガラパゴスFMEAは日本の大企業が好むFMEAであり、それを日本の中小企業がそのままの形態で導入してしまうことが致命的です。

 設計者は、どちらかといえば職人気質に寄った職業だと私は思います。そのため、学問の上に長い修業が必要です。学問がないと「我流」になってしまう恐れがあります。

 そこで、私の事務所が提案する、設計職人となるステップは以下の通りです。

(1)匠のワザ[1]~[6]を学び、修業を重ねる
(2)設計書の書き方、使い方を学ぶ
(3)FTAの作り方、使い方を学ぶ
(4)FMEAの作り方、使い方を学ぶ

 FMEAは設計者における修業階段の最上階に位置しています。FMEAを学ぶには「故障の木解析」と訳されるFTAをしっかりと学び、それに精通していなくてはなりません。