全2459文字
PR

「○○不良」という言葉でFTAを終了してはダメ

 続いて、中間事象の表現の仕方として間違っている例も一緒に考えてみましょう。

【悪い例】
・液体の密閉ができていない⇒シール不良。

 「シール不良」とだけ書かれても、これではどのような不良なのかが分かりません。不良の内容、例えばシールに求められる機能の欠損内容などを、より具体的に表現する必要があります。

 時間が十分にない中で、設計者が強制的にFTAの実施を求められると、こうした悪い例になってしまうものです。では、ここで「シール不良」だけで片付けると、対策を検討する際にどのような問題が発生するでしょうか。

 シール不良では、実際にどのような現象が発生するか分からないため、対策案を検討することができません。それでも、この場合に対策案を記載するのであれば、「シール不良にならないように検査する」「チェックリストに確認項目を追加する」などとなるでしょう。

 しかし、本当にこのような内容で対策が出来たと思いますか? 答えは「NO」です。検査やチェックリストはあくまでも暫定対策であり、流出防止策です。本来のFTAの目的は「重大故障を起こさないこと」です。つまり、発生源に対して原因を追究し、対策しなければならないのです。従って、「○○不良」という言葉でFTAを終了することは決して許されません。このようなFTAを実施しているのであれば、今すぐに次の良い例のように修正してください。

 それでは良い例を見てみましょう。

【良い例】
・液体の密閉ができていない⇒シールがねじれている⇒シール面に隙間がある⇒シールの寸法が小さい⇒シールの寸法が大きい。
・対策案:シールの寸法と公差を部品側の寸法の公差を考慮しながら再度検討し、「部品とシールの寸法公差上下限」でも隙間がないように検討する。

 このように、問題を発生させないような対策案を練ろうと思うと、そもそもの問題の定義自体が具体的でないと意味がありません。具体的な現象を考えることにより、対策内容も具体的になるのです。

 さらにもう1つ悪い例を見てみましょう。

【悪い例】
・思い込みで作業をしていた。
・考え事をしていた。
・忘れていた。

 こうした中間事象(や基本事象*2)があって、果たして対策できるでしょうか。答えは「NO」です。人間の感情的な考え方まで展開すると、無限にFTAがつながっていきます。一体、どこまでいけば基本事象となるのかが分かりません。感情的な内容は事象の中に入れてはならないのです。あくまでも人間の誤動作や行動まで抽出することが重要です。

*2 基本事象 頂上事象(システム全体で困る事象)の原因となる事象で、それ以上展開できないもの。

 良い例は次のような表現となります。

【良い例】
・標準作業以外で作業できる工程があった。
・考えて作業しなければならない工程であった。
・操作方法が製品を見ても分からない。

 私は日々、設計現場で「機能」に対する重要性を設計者に伝えています。「機能」は、設計者が最初に検討するものであり、製品が出来上がった最後にも実現できているかどうかを検証しなければなりません。製品開発では、最初から最後まで検討する内容が機能なのです。

 設計者は日々さまざまな業務をこなさなければなりませんが、「機能」は全ての事柄(品質やコスト、納期)に連動すると考え、設計を進める中で何かに迷ったときには、「機能」という視点に立ち戻って考えてみれば、FTAにおいて必ず答えが見つかります。