いまや海外に工場を持つのは当たり前の時代。技術者といえどもいつ何時海外赴任を命じられるか分からない。大手メーカーで海外拠点の社長を経験し、国内外の工場の建て直しなどを数多く手掛けてきた凄腕コンサルタントが、海外赴任と工場運営にまつわるあれこれを語る。
ジェムコ日本経営 常務理事 グローバル事業担当

2018年1月までの連載はこちら。
いまや海外に工場を持つのは当たり前の時代。技術者といえどもいつ何時海外赴任を命じられるか分からない。大手メーカーで海外拠点の社長を経験し、国内外の工場の建て直しなどを数多く手掛けてきた凄腕コンサルタントが、海外赴任と工場運営にまつわるあれこれを語る。
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技術者の皆さんが経営に携わる立場になることが多くなったのを踏まえ、経営にまつわるあれこれを書いてきた。今回は最終会として、今まで述べてきた話題を整理し、「経営を担うに当たって心がけたい5つの心得」としてまとめたく。これを胸に自信を持って経営にあたっていただきたい。
経営がジリ貧になっていく企業には共通点がある。キャッシュフローがマイナスというのは論外だが、では、果たしてどんな企業が危ないのか。
製造業で戦後最大の経営破綻と言われたのが、2017年に1兆円を超える負債総額を抱えるに至ったタカタ。リコール問題に伴う多額の債務から、資金繰りのめどが立たなくなり民事再生法の適用を申請した。
日系企業の拠点戦略の変化は、各国への進出拠点数の変化からおおむね把握できる。しかし、日系企業がどの国にどれだけ拠点を進出しているかを正しく把握するのは難しい。発表されるさまざまな調査データには、調査によって数倍の開きがある。
日本での品質不正の報道が後を絶たない。内部告発が当たり前になりつつあることを示しているとも言えるが、これだけ品質不正が続発するのは、日ごろから規格外れの製品が平気で造られてしまう現場になっていること、不良でも出荷してしまうコンプライアンス順守意識の低さの2つが根底にあると言える。
経営数字や現場で管理している数字の裏には、そうなるに至る物語がある。生産現場なら想定していなかった設備トラブルや品質トラブルに見舞われることがあるし、客先や市場の変化で生産品目が大きく変更になることもある。そのような事態をどう捉え、どう対応してきたかが、結果としての数字になるのだ。
グローバル事業における7つの課題(下)
生産拠点の主戦場は海外だが、設計・開発だけは日本に残すといった企業は多い。ここで課題となるのが、各国・各地域向けの仕様展開である。開発現場は、次なる事業に向けた開発で手一杯というところが多いからだ。
グローバル事業における7つの課題(上)
昨今の米中貿易戦争で、各社が生産・調達の見直しなどの対策を迫られている。いち早く他拠点に生産シフトした企業もあるが、部材メーカーでは客先承認に時間がかかったり、シフト先の生産体制構築に新たな投資と時間がかったりするため、様子を見ながら決めようという姿勢の企業も多い。
多い交代時のトラブル
海外工場の経営トラブルの多くは、経営責任者が交代した時に発生する。現地事情を知らないが故にすべきことをしていなかったり、現地スタッフにとっては非常識な指示や対応をしたりしがちだ。経営方針やその進め方が変わったことへの現場の抵抗もある。
工場経営と家計管理は同じ
工場の経営推進の管理は家計と同じ。皆さんの家庭では何を確認しているだろうか。家計簿をつけている人もいれば、どんぶり勘定で済ませている人もいる。しかし、誰もが絶対に確認していることがある。それは「お金が幾らあるか」だ。
仕事をしていると、想定していなかったことがしばしば起こる。急な設備トラブルでの生産停止、部品の取り付けミスによる全数不良、サプライヤーでの突然の事故発生、港湾や税関のストライキによる輸送停止などなど、事例は枚挙にいとまがない。経営環境も変化する。重要なのは、いち早い情報の把握と事前の対策。そのため…
定着率の悪い企業は業績も悪い、悩ましい離職問題
現場作業者として採用した従業員が3カ月もしないうちに辞めてしまった――。海外拠点のトップからしばしばこんな悩みを聞く。原因としては、給与条件、作業環境、人間関係の悪さなどが挙げられる。
キャッシュを生み出す上で一番重要なのは、利益を出すこと。赤字の場合、その事業を継続するために減価償却費と同額の投資をすればフリーキャッシュフローがマイナスになってしまう。事業を続ければ続けるほどキャッシュが減って経営危機に陥る。
意識していますか?海外拠点の投資回収
海外拠点の設立には多額の資金が必要になる。貴重な資金を使って拠点を設立する以上、拠点設立に当たっては回収計画を綿密に確認するはずだ。この投資回収計画の遂行責任を担うのが出向者。親会社としては、計画通りに投資を回収できているかが出向者の評価ポイントとなる。
その火災が発生したのは深夜未明。場所はある工場棟内の事務所だった。朝早く出勤した社員が発見した。事務所は全焼したが、事務所は閉鎖空間だったので幸い他設備への延焼は免れた。怪我人も出ず、生産設備も無事だった。
海外に赴任すると日本ではできないことが経験できる。責任が重く大変だが、本人にとっては大きく成長できるチャンスでもある。海外出向を不安に感じるよりも、日本では得られない経験ができる絶好の機会と前向きに捉えていただきたい。
経営に大きな差が出る拠点立ち上げ時の風土作り
新拠点の立ち上げで重要なのが、企業風土の構築。はっきり言って、企業風土はほとんど設立時に決まってしまう。企業風土いかんで、その後の事業推進には大きな差が出るだけに、どんな風土にするかをしっかりと意識して立ち上げることが大切だ。
経営環境の変化を踏まえて拠点戦略を変える
グローバルでの経営環境の変化を踏まえて、いち早く拠点戦略の変更を打ち出している企業もあれば、経営が行き詰まってから見直している企業もある。最近の経営環境の大きな変化といえば、中国のそれだろう。10年前は世界の工場と言われた同国だが、毎年10%を超える人件費の高騰で、輸出拠点としての存続が難しくなっ…
工場経営における生きた金の使い方とは
減損とは投資した固定資産の収益性が低くて、投資した金額の回収が難しいと判断される場合に、固定資産の価値を適正な価値に減額する手続きのこと。どの企業でも事業拡大を目指して固定資産に投資する。投資に当たっては、投資金額以上のキャッシュを得られるかを確認するはず。