海外出向者の悩みの中でも多いのが、離職率の高さだ。中には毎月10%近くの退職者が出るという拠点もある。これではまともな事業推進は難しい。従業員の定着率の悪い企業は、間違いなく業績も悪い。人の入れ替わりが激しければ、それだけ教育に時間と工数が必要になる。習熟度の低い従業員が多いため、作業スビートも遅くなる。ミスも品質問題も起きやすい。要は、定着率の低さは、生産性の低下、品質の低下を招き、人件費や材料費、加工費のコストアップ、ひいては低業績につながるのだ。

 終身雇用が当たり前の日本とは異なり、海外は離職率が高い国が多い。だからといって、それを“やむを得ない”と放置していたのでは経営幹部失格である。高い離職率の裏には、何かしらの問題がある。それを見極めて対策に取り組むことが肝心だ。

かぎは従業員とのコミュニケーションにあり

 現場作業者として採用した従業員が3カ月もしないうちに辞めてしまった――。海外拠点のトップからしばしばこんな悩みを聞く。原因としては、給与条件、作業環境、人間関係の悪さなどが挙げられる。

 第一に考えるべきは給与。同じ仕事をするなら少しでも給与の良いところで、と思うのは当然のこと。近隣企業の給与条件と比較して同等レベルにしておく必要がある。このとき、残業の有無、実収入として幾ら得られるのかをしっかりと提示する。状況によっては、少しでも多くの所得を得られるように適切な残業ができるよう生産計画を立てる必要もある。

 劣悪な作業環境も離職の大きな原因だ。特殊勤務手当を支払うだけではなく、現場で作業してくれている従業員としっかりとコミュニケーションを取り、改善すべき点は真摯に改善していく。環境という点では福利厚生も重要な要素である。その筆頭は食事である。朝から一日中作業している従業員にとっての最大の楽しみは、食事の時間だ。美味しい食事を低価格で提供してくれれば、従業員にとってはものすごく嬉しい。筆者の経験からも、美味しい食事を提供する食堂は、定着率の向上に結び付く。食堂にお金をかけて果たして投資回収できるのか?などと考える経営者も多いが、人が定着しないことによる経営ロスコストを考慮すれば、食堂の投資回収などたやすい。

 給与も作業環境も食堂もそうなのだが、重要なのは日頃から従業員が持っている不満や要望をどれだけ聞き出せているかだ。従業員の要望にしっかり対応できている企業は、上司や経営責任者に対する信頼も厚く定着率は高い。逆に日本人だけが特別食堂で食事しているような企業は、コミュニケーションが足らず従業員からの信頼も得られないため定着率も低い。日頃から現場で作業してくれている従業員に声を掛け、話に耳を傾けよう。従業員の立場からすれば、要望や意見に真摯に対応してくれる職場には愛着を感じ辞め難くなる。