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高収益化支援家、弁理士 中村大介
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高収益化支援家、弁理士 中村大介

 「不退転の決意」──。

 A社の社長がこの言葉を発したのは、社内での会議中のことでした。今でも鮮明に覚えているのは、社長のその語気と表情です。社長は普段は温厚な人なのですが、やると決めたことには非常に強いこだわりを見せる人です。社長の表情や言葉に、非常に強い意志を感じました。

 この会議には私だけではなく、A社の幹部社員も同席していました。検討課題は「中・長期のテーマに集中できるようにするためには?」というものでした。社長の発言の後、会議参加者は活発に議論を重ね、自分たちの力で結論を見出すことに成功しました。それまでは発言が少なかった人も社長の発言に背中を押されたのか、積極的に意見を交わすようになり、結果的にこれまでで最も挑戦的な案を採用することになりました。

兼任か、それとも専任か

 この会議に至る経緯を説明しますと、A社には30人規模の開発部があり、従来は顧客の要望に対応することが開発の中心でした。要するに、既存商品のカスタマイズや小規模な変更、特注の対応などです。反対に、自社主導のテーマや「業界初」などの挑戦的なテーマは、例年「今期は棚上げ」とし、実施しないことがほとんどでした。

 A社には、次世代の商品や事業を担う組織がこの開発部以外にはありません。そのため、A社では通常、中・長期のテーマに取り組むことはおろか、発想することもありませんでした。

  このようなことが過去数十年続いており、このままではいけないと中・長期のテーマに取り組めるような組織にすべく、幹部社員で取り組みを始めることにしたのです。そして、社長の判断により、この取り組みは次世代の幹部育成のため「部長以下の幹部社員に委ねる」という方式で実施することになりました。手始めに部長8人で議論し、社長はその会議に「オブザーバー」として参加する方式で始まりました。

 部長級の8人で検討していたところ、以下の2通りの案が出てきました。
[1]現状の開発部の中に兼任者を設ける(兼任案)
[2]組織を新設する(専任案)

 コンサルタント目線で見れば、このような場合(中・長期のテーマに経営資源を投入できる組織をつくる場合)には、[2]の専任組織の新設しかありません。2択ではなく、事実上の「1択」です。

 しかし、前述の通り、A社は次世代幹部育成のために今回の取り組みを「部長以下に委ねる」という方針を立てたので、私が議論を促すことは適切ではないと思いました。各部長が思い思いに発言していたのですが、[2]の組織(部)を新設するという話にはなりませんでした。きっと皆さん、部の新設は大掛かりだと思ったからでしょう。

 確かに、開発部長は1人いました。この開発部長が中・長期のテーマへの取り組みに対する責任者を兼任するというのであれば、部下の担当者の職種を変えれば済む話、と捉えることもできます。ですから、開発部の担当者の職種が変わる穴を、別の部署からの異動でどう埋めるかという話に終始していました。結果、組織を変えずに「担当者兼任案」を実施することにしました。