仕事に没頭してしまう落とし穴
発生する全ての仕事に対し、その場その場で反射的にこなしていけば、仕事を完了する充実感と満足感が得られます。しかし、その仕事が重要かどうかという視点ではなく、単に終わらせることによる充実感を追求するようになってしまうリスクもあるのです。時間の経過も忘れるぐらい集中していると、できた自分に酔いしれてしまい、仕事の重要度を考えることは後回しになっていることもあります。
考えるよりも作業や動作が伴う仕事や成果が見えやすい仕事は、特にその傾向があります。
例えば、芝刈りや雪かき。草を刈ったり、雪を取り除いたりすることは、きれいになった部分がどんどん広がっていくので、成果が目で見てすぐに確認できます。この達成感が、この気持ちをもっと味わいたいという“麻薬的”な効果を生み出すのです。
集中することは必要ですが、のめり込みすぎることは、自分を管理できていない状態になってしまうことでもあります。
完了バイアスを利用した仕事のルーティーン
着手しやすい仕事とやっかいな仕事とのバランスを保つために、完了バイアスをうまく使った1日のスケジュールの組み方を考えてみましょう。
[1]1日の始めはやりやすいことから始める
たくさんの仕事がある場合、頭を悩ませることはいったん置いておいて、まず簡単なことから取り掛かりましょう。仕事を1つ終わらせることで、スピードに乗っていくことができます。
ここで注意することは、簡単な仕事ばかりに集中しすぎないことです。気分だけを優先して、簡単な仕事ばかりに集中してしまうと、「やっかいな仕事はやりたくない」という気持ちが働いてしまい、重要な仕事が取り残されてしまうことにもなります。やっと取りかかったとしても、疲れてしまって仕事の質が落ちることになります。
[2]勢いがついたらすぐに切り替える
着手しやすい仕事を終わらせて、脳の準備が整えば、その後すぐにやっかいな仕事に取り掛かりましょう。やっかいな仕事の優先順位をつけるために、最もシンプルな方法は、「自分の気持ちの中で、今最も負担になっている仕事は何か」を自らに問い掛けることです
例えば、午前中に必ず提出しなければならない書類。精神的にも負担が大きいので、早く片付けたいと思っているはずです。締め切りにはまだ余裕があるのに、資料の作成が気になるという感情は、優先度を要求しているといってもよいでしょう。
急ぎではないけれど、聞かれる前に部長に報告しておきたい事項。重要度や緊急度でいうと優先順位は低いかもしれませんが、気分的に早く済ませておきたい仕事ということになります。自分の気持ちの中で負担に感じていたり、早く済ませたりしたいものは、最優先で取り掛かるのが良いでしょう。負担に感じることを減らしていくことができれば、気持ちが楽になります。そうすることで、その後の仕事の効率が格段に高まるはずです。自分の感情は、自然に仕事の優先順位づけをしてくれているといえます。
着手しやすい仕事からスタートして、エンジンが掛かったら、次にやっかいな仕事を手掛ける。やっかいな仕事は、自分の気持ちの中で最も負担に感じているものから取り掛かる。仕事のルーティーンに注意を払って完了バイアスをうまく使えば、仕事の生産性と質をグッと高めることができます。ぜひ、実践してみてください。