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3.光糸電話のボランティアに参加して

 定年間近になった頃、このまま定年退職すると通信の飛躍的な発達の一翼を担った実務経験や知識が消滅すると思った。何か少しでも社会に還元する手段がないか?日本が技術立国として存続していくために少しでも貢献できないかと考えるようになった。そして、若い学生や小学生の子供たちが科学に興味を持てるようになることをしたいと思うようになった。

 そう考えている中で、幸運にも慶應義塾大学の山中研究室主催の子供科学教室に参加する機会を得ることができた。山中研究室では研究室の学生メンバー(学部4年、修士課程、博士課程)の時間が比較的余裕がある夏期を中心に、毎年5、6回小学生高学年向けの科学教室をボランティアで開催している。

 更に、科学教室の終わった後に、一緒に参加していた他の科学教室のシニアの方(大手企業の役員クラス)と一緒に学生との懇親会を企画している。懇親会は、学生は就職について社会の大先輩と話ができる機会、シニアの方は自分の人生経験を学生に話す絶好の機会、つまり普段は話すことがない世代を超えたおしゃべりの場となっている。自分の子供より若い学生の質問(会社ってどんなところですか?自分の好きな仕事ができますか?海外で仕事をするにはどこの会社がよいですか?残業多いですか?…)に、シニアの方は楽しそうに丁寧に答えている。シニアは非日常的な感動する機会が減っているので、懇親会は普段味わえない楽しいおしゃべりの時間となっている。

[光糸電話機材]
材料
100円電卓、イヤホン、紙コップ、プラスチックコップ、マドレーヌ用のアルミカップ(各1個)セロハンテープ、接着剤、はんだ(少々)
工具
はさみ、カッターナイフ、小形ドライバセット、はんだごて、ニッパー、ストリッパー
動作検証機材
懐中電灯、ラジカセ

謝辞
 本活動は、電子情報通信学会東京支部の共同主催、支援で行われた。光糸電話実験は、NTT武蔵野R&DセンターOBの近藤様のアイデアと、奈良先端科学技術大学の荒川准教授(元慶應義塾大学助教)、山梨大学の塙准教授の御指導により開発されたプログラムです。

 本記事は、電子情報通信学会発行の機関誌『電子情報通信学会誌』Vol.101 No.3 pp.304-308に掲載された「シニアの科学教室での楽しさ」の抜粋です。全文を閲覧するには電子情報通信学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(電子情報通信学会の「入会のページ」へのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(電子情報通信学会のホームページ内、当該記事へのリンク)。『電子情報通信学会誌』の最新号はこちら(最新号目次へのリンク)。
竹下 秀俊(たけした・ひでとし)
正員
竹下 秀俊(たけした・ひでとし) 昭49静岡大・工・電気卒。同年日本電気株式会社入社。以来、交換機の研究開発、国際標準化、通信システムのSE 業務に従事。平24慶大大学院理工学研究科博士課程了、博士(工学)。平22、23 同大学GCOE・RA。平24 同特任助教、平26~28 同特任講師。