1. まえがき
筆者は、平成15年に長野県塩尻市に開設された「信州大学・塩尻市連携プロジェクト研究所」を拠点として、ICTを活用した地域創りに取り組んできた。特に、平成16年に発生した新潟県中越地震(以下中越地震)以後、ICTを活用した安全・安心な地域作りに取り組み、センサネットワーク基盤を開発した。平成19年、塩尻市は筆者らが開発した中継器約400台を用い、地域の安全・安心な生活を支えるためのセンサネットワークの中継網を構築し・運用してきた。また、中継網はその後更に600台以上の中継器により構成されるまで拡張され、塩尻市の市街地全体をカバーするセンサネットワーク中継網として、塩尻市の事業としての運用・保守がなされている。
更に、筆者らは、この中継網を活用した様々なアプリケーションを開発し、地域見守りシステム、土砂災害情報システム、河川水位監視システム等を運用してきた。
本稿では、これらの経緯とその成果を示すとともに、筆者らが自治体と進めている小学生からのIoT人材育成事業について述べる。
なお、本稿は同一筆者による電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティFundamentals Review誌解説論文(1)を本特別小特集の趣旨に沿い抜粋したものである。より詳細な内容については同解説論文を参照されたい。