
10月1日に開幕したパリモーターショーに行ってきた。同ショーはドイツのフランクフルト・モーターショー(正確にいうと、フランクフルト・モーターショーの乗用車ショー)と交互に隔年開催しており、2年ぶりの開催になる。このコラムの記事「VW、ベンツなど欧州メーカーがEVに本気」、「日産が20年かけ開発、可変圧縮比エンジンの凄さ」で、前回のパリショーの様子をお伝えしているのだが、独フォルクスワーゲン(VW)を筆頭とする欧州メーカーがEV(電気自動車)に本気で取り組み始めたことや、日産自動車が世界で初めて実用化に成功した可変圧縮比エンジンなどを紹介した。
ところが、である。今回のパリモーターショーの一番のサプライズは、前回のメインの話題として取り上げたフォルクスワーゲンも日産も出展しなかったことである。筆者も世界のいろいろなモーターショーを取材してきたが、欧州で開催される国際モーターショーで、フォルクスワーゲンが出展しないのは初めての経験だ。
このコラムの記事「異例ずくめの『フランクフルトモーターショー』」でも、フランクフルト・モーターショーへの出展を見送る完成車メーカーが続出したことに驚いたことを報告したが、その流れは今回のパリでも収まっていないようだ。前回のパリショーへの出展を見送った英ジャガー・ランドローバー(JLR)は今回は出展したものの、今回のパリショーでは先に触れたフォルクスワーゲンや日産以外にも、日本メーカーではマツダやスバル、欧州メーカーでは、独オペル、スウェーデン・ボルボや英ロールス・ロイス、同アストン・マーティン、同ベントレー、伊ランボルギーニ、フィアット・クライスラー・オートモビル(FCA)、米フォード・モーターなども参加しなかった。
電動化の流れは変わらず
「展示されなかったもの」の話題はこのくらいにして「展示されたもの」の話題に移ろう。今回のショーでは引き続き「電動化」が大きなテーマだったのだが、前回との違いは、2年前にはコンセプトの提案が多かったのが、今回は商品化の段階へと着実に前進していることだ。その象徴的なモデルの一つが、独ダイムラーが2年前のパリモーターショーでコンセプトモデルを出展したEVの新たなブランド「EQ」の具体的な商品化第一弾である「EQC」が展示されたことである。EQCはすでに9月に報道発表されているが、このショーで初めて一般公開された。外観は、2年前に発表されたEQのコンセプトモデルのデザインをかなり忠実に商品化したという印象だが、コンセプトモデルではフロントグリルの部分までディスプレイになっていたのを、商品段階では通常のグリルに変更した。

EQCはSUV(多目的スポーツ車)型のEVで、まだ発売日や価格は公開されていないが、2019年に発売され、価格は900万円程度と予想されている。スペックの詳細も未公表だが、航続距離は450km以上で、また前輪と後輪の両方にモーターを備えており、前後のモーターを合計した出力は300kWに達する。車体寸法は全長2873×全幅1884×全高1624mm、ホイールベース2873mmと同社の「GLCクラス」に近い。
独アウディも同社としては初めての量産EVとなる「Audi e-tron」をこのショーで発表した。Audi e-tronもEQCと同様にSUV型のEVで、全長4901×全幅1935×全高1616mm、ホイールベース2928mmと、車体寸法はEQCに非常に近い。前後輪にそれぞれモーターを備え、その合計出力が300kWであることもEQCと共通する。航続距離はEQCよりも若干短い400kmと発表されている。EQCより早く、欧州では2018年末から出荷が始まる予定だ。
