全4785文字
PR

オールホンダの力を結集

 F1プロジェクトを任された浅木氏がまずしたことは、オールホンダの力を結集することだったという。先に説明したように、現代のF1のパワートレーンは複雑だ。エンジンだけでなく、MGU-HやMGU-K、過給機を構成するタービンやコンプレッサー、バッテリー、それらを制御するコントローラーなど多くの構成要素がある。複雑なパワートレーンの全貌を把握するのに、過去にF1の経験がある浅木氏でさえ「半年くらいかかった」という。

 浅木氏がF1に復帰した当初、トップチームのメルセデスとはエンジンの出力に大きな差があったという。エンジンのホンダと言われる同社ですら「同じ内燃機関なのに、どうしてこんなに差があるのか分からなかった」(浅木氏)。その燃焼の秘密の解明も「目からウロコが落ちるような新しい事実を見つけた」(同氏)と語るなど、徐々に手応えをつかんできているようだ。

 そして、オールホンダで取り組んだ最も大きな成果がエンジンの信頼性の向上だ。ホンダエンジンは2018年から2019年にかけて大きな変更をしている。それが大径の過給機を使うことだ。それまではVバンクの間に過給機を収めていたが、それではタービンやコンプレッサーの径に制限があるため、Vバンクの外に出した。しかし、タービンやコンプレッサーにMGU-Hのモーターまで組み込んだ過給機のユニットは複雑で、コンプレッサーやタービンを大径化した結果、特に軸受け周りの負荷が増し、耐久性が大きく低下してしまっていた。それが、航空機の「ホンダジェット」のチームに相談した結果「ほぼ一発で直った」のだという。

2018年シーズンのホンダのF1エンジン。Vバンクの間に見える大きな円筒形の装置がMGU-H(熱エネルギーを回収するモーター内蔵の過給機)だ
2018年シーズンのホンダのF1エンジン。Vバンクの間に見える大きな円筒形の装置がMGU-H(熱エネルギーを回収するモーター内蔵の過給機)だ