全5222文字

 このコラムの「新型プジョー508の『危機感が生んだ美しさ』」を書いたときにも思ったのだが、最近のグループPSA(旧PSAプジョー・シトロエン)の新車は出来がいい。2018年秋のパリモーターショーで実車を見て以来、一度乗ってみたいと思っていた同グループの新型コンパクトSUV(多目的スポーツ車)「DS3クロスバック」に今回試乗して、改めて感じたことだ。

グループPSAのコンパクトSUV「DS3クロスバック」
グループPSAのコンパクトSUV「DS3クロスバック」

 DS3クロスバックについては、既にこのコラムの「現代と未来、対照的な展示のPSAとルノー」でも紹介しているが、そのときからBセグメントとは思えないデザインや装備、質感に驚き、日本に導入されたらぜひ試乗したいと思っていた。そして今回、公道で試乗して、Bセグの枠を超えているのはデザインや質感だけではないことを知った。

なかば伝説化している名車「DS」

 DSという名称を聞いて、クルマに興味のある人がすぐピンとくるのが1955年にフランス・シトロエン(当時)が発売した高級乗用車「DS」だろう。量産車としては世界で初めて油圧とガス圧を組み合わせたサスペンションである「ハイドロニューマチックサスペンション」を採用。当時の最新技術を、宇宙船を思わせるような流線型のボディーで包んだDSは、当時のシャルル・ド・ゴール大統領の専用車にも採用され、なかば伝説化している自動車史の名車の一つだ。

流線型のボディーに最新技術を詰め込んだ歴史に残る傑作車「シトロエンDS」(写真:Groupe PSA Japan)
流線型のボディーに最新技術を詰め込んだ歴史に残る傑作車「シトロエンDS」(写真:Groupe PSA Japan)

 その「DS」という名称をPSAが復活させたのが2009年である。まずシトロエンブランドで、Bセグメントの3ドアハッチバック車「DS3」を発売し、2014年にはシトロエンブランドからDSブランドを独立させ、今に至っている。DSブランドを独立させたことで、PSAは「シトロエン」「プジョー」「DS」の3つのブランドを擁することになった。

 その位置付けは、シトロエンが普及ブランド、プジョーがやや上級の普及ブランドであり、DSはドイツ・アウディなどと並ぶ高級ブランドとして位置付けたいというのがPSAの野心だ。だが、まだDSブランドの認知度はアウディ、BMW、メルセデス・ベンツのいわゆる「ジャーマン3」に比べて低く、高級ブランド確立には道半ばというところだ。