驚いた競争が勃発した。電気自動車(EV)の“電費”競争である。もともとEVはエンジン車に比べるとエネルギー効率が高い。エンジン車が燃料の持つエネルギーの2割程度、ハイブリッド車(HEV)でも3割程度しか駆動力に変換できないのに対して、EVは7割以上を変換できる。なのに、そのもともと高いEVのエネルギー効率をさらに高めようという戦いが始まった。舞台は2022年1月の米国ラスベガスである。
エネルギー効率を3割改善
多くの読者がご存じのように、毎年1月にはラスベガスで世界最大級のテクノロジー見本市「CES」が開催される。昨年のCES 2021は新型コロナウイルスの感染拡大により、初めてオンライン開催となった。
ここ5年ほどは毎年CESに参加している筆者も昨年はオンライン参加となったものの今年のCES 2022にはリアル参加するつもりだった。だが変異型「オミクロン型」の感染急拡大で断念した。内外の企業でも、リアル展示を取りやめる企業が相次ぎ、出展企業数は例年の半分程度にとどまったもようだ。
ドイツDaimler(ダイムラー)もリアル展示を断念し、CESの直前にオンライン発表したのがEVコンセプトカーの「VISION EQXX」である。EQXXの特徴は、1000kmの航続距離(実際の交通環境下でのデジタルシミュレーションに基づく暫定値)を100kWhという電池容量で実現している点だ。
既にダイムラーは、約107.8kWhの電池を積む最高級EV「EQS 450」で、784km(欧州WLTPモード)という航続距離を実現しているが、これと比較するとEQXXは単位走行距離当たりのエネルギー消費量を27.3%減らしている。
EQXXの電費を計算すると、ちょうど100Wh/kmということになり、これを日本のEVと比較すると、日産自動車の「アリア」やトヨタ自動車の「bZ4X」が155Wh/km程度なのと比較しても35%程度エネルギー消費量が少ない。
EQXXは、この画期的なエネルギー効率を実現するために、次世代のEV専用プラットフォーム「MMA(メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャー)」を開発した。このプラットフォームは小型車や中型車にも適用可能だという。