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 今、世界の自動車業界が電動化にひた走っているその震源地の1つは、間違いなくドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)である。2015年に発覚したいわゆるディーゼルゲート事件で、VWの信用は地に落ち、ダーティーなイメージにまみれた。そのVWが選択したのが、業界に先駆けてEV(電気自動車)化を進めることだ。トヨタ自動車と並ぶ、世界最大の自動車グループであるVWの方針転換は、世界の自動車業界に大きな影響を与えた。そして、そのVWの世界戦略EV「ID.4」がついに日本にも11月22日に上陸した。

フォルクスワーゲン グループ ジャパンが2022年11月22日に発売した「ID.4」
フォルクスワーゲン グループ ジャパンが2022年11月22日に発売した「ID.4」
(写真:筆者が撮影)
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 ID.4の特徴は、同社としては初めてのEV専用プラットフォーム「MEB」を採用した車種であることだ。MEBは、フロア下に平らにバッテリーを敷き詰めるのは他社のEV用プラットフォームと同じだが、後輪駆動を基本とする点が、トヨタ自動車や日産自動車のEV専用プラットフォームと異なる。また、エンジンルーム(モータールームというべきかもしれないが)を大幅に短縮できるため、全長の割にホイールベースを長く取ることができ、室内空間を広くできるのも特徴だとしている。

ID.4に採用されたEV専用プラットフォーム「MEB」。後輪駆動を基本とするパワートレーンのレイアウトが特徴だ
ID.4に採用されたEV専用プラットフォーム「MEB」。後輪駆動を基本とするパワートレーンのレイアウトが特徴だ
(出所:VW)
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 MEBを採用した最初のEV「ID.3」は、欧州では既に2020年に発売され、日本への導入が待たれていたが、結果的に、ID.3よりも後に発売されたID.4のほうが日本に先に上陸することになった。ID.3は、いわば「ゴルフのEV版」という位置付けであり、車体サイズもゴルフに近い。これに対して、ID.4は一クラス上のC/DセグメントのSUV(多目的スポーツ車)であり、VWの車種でいえば「ティグアン」に近いポジショニングである。実際に両車種を比べてみると、全長はティグアンの4520mmに対して、ID.4は4585mmと65mm長いが、ID.4のホイールベースはティグアンより95mm長い。その分ID.4は前後のオーバーハングが短く、室内は広く取られている。

ID.4は車体サイズこそティグアンに近いが、ホイールベースは95mm長い。にもかかわらず、ティグアンよりも小回り性能(有効回転径)が優れる
ID.4は車体サイズこそティグアンに近いが、ホイールベースは95mm長い。にもかかわらず、ティグアンよりも小回り性能(有効回転径)が優れる
(出所:フォルクスワーゲン グループ ジャパンの資料を筆者が撮影)
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 また特徴的なのは、ホイールベースが長いにもかかわらず、後輪駆動のため前輪の切れ角を大きく取れるので、ID.4の最小回転半径がティグアンと同じ5.4mに抑えられていることだ。しかもID.4はティグアンよりフロントオーバーハングが短いため、有効回転径(オーバーハングまで含めたウオール・トゥー・ウオールの回転半径)はID.4が10.2mと、ティグアンの11.5mより短い。このためVWは、Bセグメント車の「ポロ」並みの小回り性能だとうたっている。