日産自動車は2023年2月27日、2021年11月に発表した2030年までの長期経営計画「Nissan Ambition 2030」の進捗状況を報告するとともに、2030年度までに投入する電気自動車(EV)の車種数を増やしたり、2030年時点でのグローバルの電動車両(EVとシリーズ式ハイブリッド機構「e-POWER」搭載車の合計)の比率を上方修正したりといったアップデートを発表した。その要旨は以下の通りだ。
- 2026年度の電動車の販売比率が、欧州では従来見通しの75%から最新見通しでは98%へ増加、日本が55%から58%へ増加、中国は40%から35%へ減少する。米国では2030年度までにEVのみで40%以上という見通しに変更なし
- 2030年までに投入する電動車両のモデル数が、従来計画の15車種のEVを含む23車種から、19車種のEVを含む27車種に増加
- この結果、2030年度時点の「ニッサン」と「インフィニティ」の両ブランドを合わせたグローバルでの電動車比率が、従来見通しの50%から55%以上へ上昇
- 日産らしさと新しい価値を融合させる新しい内製ソフトウエアを搭載したSDV(ソフトウエア定義車両)を、2025年を皮切りに拡大
このように今回の発表は、欧州を中心に電動化を加速させていること、クルマのソフトウエア化にも目配りしていることをアピールするものとなった。
次世代EVプラットフォームに言及
今回の会見で明らかになった事実の1つは、日産がEV専用プラットフォームを2025年ごろに刷新することを計画していることだ。例えばドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は現在EVプラットフォームとして「MEB」を展開しているが、2026年からは新世代プラットフォーム「SSP」へ切り替えることを発表しているし、トヨタ自動車も次期社長の佐藤恒治氏が2023年2月13日の会見で2026年から新世代のEVプラットフォームをレクサスから展開することを明らかにした。ホンダもEV向け新規プラットフォーム「Honda e:アーキテクチャー」を2026年から展開することを発表している。世界の主要な完成車メーカーが2020年代半ばにEVプラットフォームの刷新を計画する中、日産が「アリア」などに搭載する「CMF-EV」プラットフォームをどうするのか、その行く末を筆者は注目していたのだが、今回の会見で、その疑問が解けた。
会見によれば、2025年に投入する「新しい内製ソフトウエアを搭載したSDV」が、次世代のCMF-EVプラットフォームを採用する新世代EVになるようだ。VWやトヨタ、ホンダも新世代EVはSDVになることを表明しており、日産の発表も他社の動きに歩調を合わせたものになる。興味深いのは、次世代のCMF-EVが当初よりもバリエーションを限定したものになると発表したことだ。
日産は当初、次世代CMF-EVには全幅の異なる「ナロー」と「ワイド」の2種類、バッテリーパックのバリエーションも「ミドル」と「ハイ」の2種類、そしてサスペンションも「スタンダード」と「プレミアム」の2種類を用意する計画だった。これらの組み合わせに加え、米国、欧州、中国のそれぞれの仕向け地に合わせた変更を入れると、全部で16種類のバリエーションを用意することを想定していた。これを見直し、プラットフォームの幅を「ミドル」で統一、サスペンションも「プレミアム」で統一することで、仕向け地別の変更を入れてもバリエーションを3種類に絞り込んだという。
しかも、このバリーションを絞り込んだ次世代CMF-EVプラットフォームが、現在「CMF-CD」プラットフォームを使う「キャシュカイ」、「CMF-B」プラットフォームを使う「ジューク」、そして独自プラットフォームの「リーフ」の次期モデルに使われるという。つまり、次世代CMF-EVプラットフォームはバリエーションを絞り込んだうえで、従来よりも幅広いセグメントの車種に展開することで開発の効率化や量産規模の確保によるコスト削減を狙っていることになる。実際、今回の発表によれば、次世代EVのプラットフォームのコストは、現行のアリアよりも7%削減できるという。