この記事が掲載されるのは2023年3月中旬ごろだろうから、既に内容をご存じの方も多いと思うが、3月1日に開催された米Tesla(テスラ)の投資家向け説明会の内容には様々な意味で衝撃を受けた。最初に思わず口から出たのは「テスラで働くって大変だなあ」という感想である。何が大変といって、コスト半減を目指すという次世代EV(電気自動車)のプラットフォームが越えようとしている技術の壁の高さが、である。
クルマを部分ごとに組み立て
今回の投資家向け説明会では、次世代EVの詳細が発表されなかったことが投資家の失望を買い、発表翌日のテスラの株価は5%ほど下げたのだが、筆者に言わせると、次世代EVの核心となる部分をかなり開示していたといえるのではないかと思う。その1つが、革新的な組み立てプロセスの採用だ。
従来の組み立てプロセスは、数百ものプレス部品を組み立て、塗装したら一旦ドアを外し、開口部から作業者が出入りして室内に部品を取り付ける。この出入りという付加価値を生まない動作に多くの時間が費やされる。この時間をミニマムにするためにテスラが考えたのが、車体を幾つかの部分に分割し、それぞれを完成させてから組み立てる方式だ。例えばバッテリーパックはそのまま床面となり、そこに内装材やシートをあらかじめ組み付け、これを車体の下に空いた大きな穴から組み付ける。車体前部はフロント回りのフレーム、パワートレーンやサスペンションだけでなく、室内とエンジンルーム(モータールームと呼ぶべきか)の間の隔壁、さらにはそこにインストルメントパネルまで組み付けたうえで他の部分を合体させる。これにより、トータルの作業面積×作業時間を30%、工場の床面積を40%、製造のための固定費を50%、それぞれ削減できるという。