はじめに
刀剣博物館は、(公財)日本美術刀剣保存協会(以下、協会)の付属施設である。第二次世界大戦の終結1945(昭和20)年、占領軍は日本刀のすべてを接収破棄せよとの命を下した。対して「日本刀は武器にして武器のみにあらず、日本を象徴する芸術品である」ことを訴え続け、核となり活動した人物が本間順治、佐藤貫一の両氏である。結果、連合国軍総司令部は、美術的価値を審査のうえ、それらに適合するものに関しては日本の地に留め保管する指令を発布した。
協会は1948(昭和23)年、上記主旨のもと文部大臣の認可により設立された。当初協会は、東京国立博物館の一室を間借りし運営していたが、1968(昭和43)年渋谷区代々木の地に事務所を開き、刀剣博物館を設置、その後長きにわたり日本刀の保存・公開を担うべき拠点となり現在に至っている。2018(平成30)年、協会は設立70年、博物館は50年を迎える。
2011(平成23)年3月11日、東日本大震災発生、東京都下においてもその影響は甚大なものとなった。当博物館展示室においては作品にこそダメージは少なかったものの、室内の中央独立ケースがゆがみ、補強工事を強いられる結果となった(図1、図2)。当館では数年前より老朽化に伴い、博物館の建て替えや移転の声がたびたび上がってはいたものの具体化をみずにいたが、この震災を機に協会は現実的に博物館の建て替えか移転かの道を検討すべく動き出したのである。