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LED照明導入

 さて、新博物館は2014(平成26)年10月に安田庭園内建造物選定決議が成された翌月、新博物館の建築施工は槇総合計画事務所に依頼、展示ケースの施工については、2016(平成28)年11月コクヨと施工契約を結んでいる。展示室のベース照明はLED、ケース内照明もLEDである。

 2017(平成29)年2月、壁面展示ケースのモックアップを実施(図8)。寸法や外部塗装などには問題なし、ただし、ケースの内部仕上げを当初考えていたポリエステルスウェードからクロス貼りに変更。旧博物館展示室ではケースから床面まで、恥ずかしながら異常なまでの映り込みが気になっていたので、展示ケースのガラスは必然的に高透過低反射合わせ仕様(刀剣ケースはt5+t5ガーディアン社、甲冑用ケースはt6+t6日本板硝子)とした。ケース内部で刀剣用は上部のライン照明、甲冑用は上・下部にライン照明(シームレス2色混合2700/4000K調光)を配し、かつ3000Kのスポットライト(キテラス)がつく(図9、図10)。

図8 壁面ケースモックアップおよびスポット選定
図8 壁面ケースモックアップおよびスポット選定
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図9 ケース内部ライン照明 上2769 K・下4019 K
図9 ケース内部ライン照明 上2769 K・下4019 K
©コクヨ(株)
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図10 ケース内部スポットライト3000 K
図10 ケース内部スポットライト3000 K
©コクヨ(株)
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 次いで同年5月、独立ケースのモックアップを実施。こちらは高透過ガラスt8仕様。内部クロスは壁面ケースと同様なものと、もう1点色彩の違うもので比較決定した。ケース内照明は壁面ケース同様、LEDライン照明(シームレス2色混合2700/4000K調光)。ケースによっては脱着式ミニスポット3000Kが前面につく。しかし実作品をケースに置いての重なる試行の結果、大胆にもケースそのものの形状から変更することとなった。ケース上部がフラットの形状では光源からの照射角度に制限が多く、とりわけ刀装や刀装具展示に異様なグレアと作品の影をもたらした。かつ短刀展示では思うほど地刃がでない。結局ケースの背面を高く前面を低くし傾斜をもたせ、ミニスポットは背面上部に取り付け配光調整が可能となる仕組みとした(図11、図12)。これにより異様なグレアと影は控えることができたが、結局のところ短刀は横置きではなく、縦置きでの展示仕様とした。

図11 独立ケースモックアップ最終決定
図11 独立ケースモックアップ最終決定
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図12 独立ケース(短刀・刀装・刀装具)図面
図12 独立ケース(短刀・刀装・刀装具)図面
©(株)槇総合計画事務所
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 さてこうした一連の展示ケースモックアップのうちで核となる検討事項とは、いうまでもなく壁面展示に照射するケース外打ちLEDスポット照明器具の選定である。前記壁面ケースのモックアップ時、その最終選定が行われた。数年かけて多社を試行し、結果当日の時点で最終2社に絞った。最後の二社択一である。その結果、選定当時は未発売(7月発売)であったパナソニック製品(ビーム角22°)を採択(図13)、若干器具からガラスへの映り込みが確認されたので、フードをつけるなどの特注改良を条件とした。また形状の変化に連動して、垂れ壁を50mm下げる調整を行う。ちなみに展示空間に用いているベース照明は3000K統一のダウンライトを基本としている。

図13 壁面ケーススポット照明LED分光特性
図13 壁面ケーススポット照明LED分光特性
©パナソニック(株)
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 長らく日本刀展示へのスポット照明は「見え」に関していうならば、白熱ランプの光が最適であると信じ、しかしやむなくLED照明とするならば、色温度は同レベルの2700K前後とし、かつ日本刀に美術的要素をより求めるには、やはり演色性優位の紫色励起白色LEDに期待を寄せるしかないと考えていた3)4)。その想定内にあった製品との二者択一であったのだが、予想を差し置いての大抜擢ともいえる選定となった。しかも年齢差のある学芸員5名、全員一致の意見であった。後日様々な関係者の方々に「見え」に関して何がどう優れていたのかをたびたび質問された。まずは、先述一連の見えるべきものが「見えること」、そして2社の比較論となるがより見え方が「自然であったこと」である。現在、見えの評価指標ともいえる演色性に関して美術館・博物館でのRa957)は、おおよその器具が当然ともいえる(図14)商品開発下である。

図14 壁面ケーススポットLED照明演色性
図14 壁面ケーススポットLED照明演色性
©パナソニック(株)
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 それでは良く見えてかつ「自然」であるということはいかなる要素が絡んでくるのか、日本刀にとって何らかの分光バランスがうまく調和したのであろうか。あるいは展示室空間のベース照明やケース内照明などとの相性なのか(図15)。ちなみに本年4月にはIES(北米照明学会)より新しい演色評価指標Rfが発表されたり、相関色温度が同じでもDuv(色偏差)などの相違による光色の変化など7)8)、LED照明選択の科学的な判断材料は増えつつあるようにも思える。ただし、その科学的解析については向後専門家にお任せし、私はもろもろの道理にいたる数々の発見を楽しみに待つこととしたい。

図15 壁面展示ケース(刀剣)図面
図15 壁面展示ケース(刀剣)図面
©(株)槇総合計画事務所
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