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 本記事は、照明学会発行の機関誌『照明学会誌』、第第102巻、第3号、pp.112-115に掲載された「導光板を用いた照明光学技術」の抜粋です。照明学会に関して詳しくはこちらから(照明学会のホームページへのリンク)。
 

 LED技術の発展により、寿命・効率は蛍光灯を超え、LED照明器具が住宅、施設、屋外用など幅広い領域に普及している。一方でLED光源の眩しさなどが照明環境において大きな課題となっており、グレアを低減した照明器具も多く開発されてきている。また空間の照明環境演出の観点では眩しさに配慮しつつ、明るさ感のある開放的な空間演出および空間と違和感なく溶け込むデザイン性が要望されている。これらを満足する新しい手法として面で発光させることでグレアを低減でき、かつ微細プリズムにより配光制御することで上記の空間演出およびデザイン性が実現可能な導光板を採用したLED照明器具の光学技術について説明する。

導光板の光学系概要

導光板の原理・構成・特徴

 導光板の板面に加工がされていない場合、入射端面から導光板内部に向かって光を入れると全反射の法則により光は板面から出ることなく、反対側の出射端面からすべて出力される。面発光させるために板面から光を取り出すためには、板面に光の反射角度を変えるための何らかの表面加工が必要となる。このような加工を行うことによって、拡散加工を施した領域に到達した光が方向を変え、そのうちの一部の光が全反射せず、光が取り出されることにより、板面を発光させることが可能になる。また加工を板面全体に施すことにより、板面全体を面で発光させることができるようになる。更にこのような加工を非常に小さなドット状とし、板面全体に多数個配置するような構成とすることにより、量産が可能で、下記で述べる均一な輝度分布となるような設計も可能となる。上記のようなドット状の拡散加工の事例としては、シルク印刷、レーザー加工、インクジェット印刷、凹凸加工(微細プリズム)などがある。

微細プリズム導光板のメリット

 発光面から光を取り出すための拡散体としてはシルク印刷にて形成したものが最も普及している。しかしシルク印刷の場合、印刷面に到達した光線は拡散してしまい、配光が制御できず、意図した空間照度分布を実現できない。一方プリズムならば、プリズムの角度を要求に応じて設計することにより、配光制御することが可能となる(図1)。導光板の配置、構成にもよるが一般的なランバート配光はもちろん広角配光、およびある程度の狭角配光も可能である。また、プリズム面からの漏れ光を活用した両面発光の器具も可能となっている。

図1 拡散体による配光の違い
図1 拡散体による配光の違い
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導光板の設計手法概要

輝度均一化のためのドットパターン設計

 板面全体で均一な密度でドットパターンを設計すると光源に近い領域の輝度が高くなってしまい、不均一な輝度分布となってしまう。そのため、光源から近い領域では、ドットの密度を小さく設定し、光源から遠くなるに連れて徐々に大きくなるように設計する(図2)。ドットパターンの設計は市販の光学解析ソフトを用いて行うことも可能である。均一な輝度分布および下記で述べる出射端面から発する必要な光束となるように設計を行う。

図2 グラデーション配置の事例
図2 グラデーション配置の事例
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導光板出射端部のグレア軽減設計

 板面からすべての光を取り出すことはできず、一部の光は出射端面から出力されてしまうが、器具構成などにより有効活用することが必要である。

 一方で出射端部から発する光は狭い領域から出射され、LEDから発した光のうち入射端面から直接、出射端面に向かう光が存在するため、出射端部を見たとき非常に強いグレアを感じてしまう。この課題を解決するためには、出射端面に拡散処理行うことが有効である。拡散処理を行うことで、輝度分布を平均化し、最大輝度を低下させることができる。その結果、グレア、粒感を緩和でき(図3)、更に出射端面からの光による、壁面、机上面などへのLEDの像の写り込みなども軽減することができる。拡散処理のレベルは小さすぎるとグレア、粒感が解消されず、大きすぎると出射端面からによる配光制御が不十分となるため、拡散度のバランスが非常に重要である。

図3 出射端面の輝度分布
図3 出射端面の輝度分布
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