大阪で推進されてきた「大阪・水と光のまちづくり」は、国内屈指の公民連携による水辺の再整備の取り組みである。15橋以上の橋梁ライトアップ、2km以上に及ぶ護岸照明演出など大都市ならではのダイナミックな公共照明整備が、制度の見直しを含む多様な担い手の活用や組織化、公共空間の使いこなしや市民参加によるにぎわいづくりなどのソフト事業とともに両輪で実現してきた稀有な都市魅力創造である。ここでは、その15年にわたる取り組みを振り返るとともに、地方創生における夜間景観形成の意味と価値、都市のにぎわいづくりにおけるあかりの役立ちなどについて考察してみたい。
水都大阪の取り組み
水都大阪の黎明期
都市再生の必要性を掲げる中で、都市の誇りを回復するため、水や川の価値を見直すべく始まったのが「水都大阪」である。大阪府、大阪市、経済界が都市間競争を勝ち抜くためには都市格の向上が重要だとする認識のもと、大阪都市圏の都市環境インフラの整備・再生を促進し、市民活動の舞台とすることでシビックプライドを高め、外部からの憧れを喚起し、結果として文化や産業の新たな活動を呼び込む、それが都市のブランドとして発信されるという循環を生むことをねらいとした。
2000年以前、大阪の水辺は市民が近づかない場所であったが、2001年に道頓堀遊歩道整備事業が国の都市再生プロジェクトに決定されたことで「水都大阪」は本格化する。それらはちょうどLED光源の登場というタイミングであり、2005年に竣工するとんぼりリバーウォーク(図1)は、おそらく関西では初めての「水銀灯以外の多様な照明手法が使われる公共遊歩道」であった。同時期には、水辺に出会い楽しむコンテンツとして、水上カフェ、川沿い飲食店の川床設置など民間サイドのNPOや企業による多様なアイディアがゲリラ的に実現され、有志のネットワークが形成された。まだ明確な官民の事業計画は存在していないが今までバラバラに動いてきた官民が参画するシンボルイベントの準備が進められていた。