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日本が目指すべき研究開発の方向性

 調査の結果を踏まえ、日本が目指すべき研究開発の方向性などについて、以下の通り提言としてまとめました。

●匿名化関連技術動向の観点から

 ・我が国においても、クラウド上には多様なデータが蓄積され、パーソナルデータを含む非構造化データを活用する場面が増えているところ、目的外利用や第三者提供の需要を勘案しつつ、パーソナルデータの流出による被害を低減するため、構造化データを対象とした匿名化関連技術に加えて、非構造化データを対象とした匿名化関連技術の研究開発にも注力すべきです。

 ・パーソナルデータを含むデータの解析処理において、人工知能(Artificial Intelligence: AI)技術の利用がますます拡大することが予想されるところ、匿名化関連技術の適用によって解決可能な課題と、匿名化関連技術だけでは解決できない課題があることを踏まえつつ、AIの特性に対応した匿名化関連技術の研究開発が必要であり、例えば以下のような研究課題に取り組むべきです。

 (1) 匿名化する前のデータをAIに入力した場合の出力結果が、匿名化した後のデータをAIに入力した場合の出力結果とほぼ変わらない性質を満たす匿名化関連技術には、どのような種類があるか、どのような性質が求められるかを特定すること。

 (2) 将来、AI技術の発達により、匿名化した後のデータから、個人が再識別されたり、個人の属性が推定されたりするリスクが高まる恐れがあるが、このようなリスクを妥当なコストで回避あるいは低減する技術を開発すること。

●事業分野動向の観点から

 事業分野ごとに、匿名化の対象となるデータの形式や、求められる評価指標(安全性、有用性、処理効率等)の傾向は異なります。従って、事業分野ごとのアプリケーションの特性を調査し、アプリケーション側の要求に適合した匿名化データを得る技術を開発する必要があります。

 特に、重点事業領域として以下の事業分野が挙げられます。

 (1) 高い成長と日本企業の優位性が期待される事業分野(「社会インフラ」、「健康管理・予防医学」など)

 (2) 業界横断・産学連携や継続的技術改良で将来高収益が期待される事業分野(「金融」、「流通」、「医療」など)

●評価指標と国際標準化動向の観点から

 ・事業分野ごとに、匿名化技術の適用例を蓄積し、ビジネスに役立つ評価指標を開発することが必要です。

 ・学術的な研究が先行している評価指標は、事業分野特化型指標のプロトタイプとして、あるいは、幅広い分野で汎用的に適用可能な指標として、引き続き開発を進めることが求められます。

 ・産官学の連携により、実用的な評価指標を早期に確立し、普及啓発活動を推進することで、ビジネスの活性化につなげることが肝要です。

 ・評価指標の開発における我が国の先進的取り組みを国際標準化につなげるべくイニシアチブをとり、フロントランナーとしてのアドバンテージを獲得すべきです。

【用語集】
個人情報:個人情報保護法(第2条第1項)では、「『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの 二 個人識別符号が含まれるもの」と定義されている。
パーソナルデータ:個人情報に加え、個人情報との境界が曖昧なものを含む、個人と関係性が見いだされる広範囲の情報(平成29年版情報通信白書より引用)。
構造化データ:顧客情報や在庫情報など、定型的に扱えるデータ。データベースを利用して、データの整理や検索ができる。コンピューターがビジネスで利用され始めたころは、全データ量のほとんどが構造化データだったが、現在では非構造化データが大半を占めるようになっている。
非構造化データ:文書データ、電子メール、写真、動画など、定型的に扱えないデータ。コンピューターの利用範囲の広がりに伴い、近年、非構造化データをビジネスで活用するために、非構造化データを高効率かつ高速に管理、分析する処理技術が求められている。