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ストレージクラスメモリー(Storage Class Memory:以下、SCM)を使った新しいメモリーシステムアーキテクチャーが、コンピューティング変革を支えていくことになるとの期待から、近年、注目を集めている。そのため、基礎的な研究とともに、実用化に向けた研究開発が進展している。SCM及びSCMの基本要素である記憶素子(セル)は、今後のコンピューティング変革を支えるクラウド側からエッジ側製品までの広範な分野への応用が期待される重要技術である。特許出願の面では、出願人の国籍別で日本が最多であるが、近年は米国と台湾が増加傾向にある。今後は、ユーザーの要求性能に合わせた製品開発が求められるとともに、企業と大学・研究機関の連携強化などが重要である。

 近年、ディープラーニングをはじめとするAI(Artificial Intelligence)の進化により、コンピューター処理能力の著しい向上が必要になってきています。従来のコンピューター処理能力の向上は、半導体の微細化の進展とともにCPU(Central Processing Unit)の性能向上が大きく貢献してきました。ところが、AIの進化に求められるコンピューター処理能力は、ノイマン型コンピューティングの処理能力を大きく上回っています。

 また、蓄積されていくデータの量も指数関数的に増大しています。従来のCPU中心のコンピューティングシステムから、蓄積されたデータを中心とするデータセントリックという新たなコンピューティングシステムが必要となってきています。データセントリックは、データ処理のボトルネックを解消するために、データのやり取りがスムーズに行われる新たなコンピューティングシステムです。さらに、新たな不揮発性メモリーであるSCMによって、DRAMとストレージとの間のアクセス速度での10の3乗~10の6乗倍のギャップ、コストでの10倍のギャップを埋めることが期待されています。

 SCMを使った新しいメモリーシステムアーキテクチャーが、コンピューティング変革を支えていくことになるとの期待から、SCMに近年注目が集まっています。そのため、基礎的な研究とともに、SCMの実用化に向けた研究開発が進展しています。さらにSCMの基本要素である記憶素子は、脳型コンピューター(ニューロモルフィック型デバイスなど)の学習済みデータを記憶する各基本記憶素子(ノード)への応用の可能性も秘めています。SCM及びSCMの記憶素子は、今後のコンピューティング変革を支えるクラウド側からエッジ側製品までの広範な分野への応用が期待される重要技術であるといえます。

 このような背景の下、特許庁は「平成30年度特許出願技術動向調査」において、SCMに関する市場動向、政策動向、特許出願動向、研究開発動向等を調査し、その実態を明らかにしています。本調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の技術俯瞰(ふかん)図を示します。本調査では、図1に示す観点、すなわち、SCMを必要とする産業分野、機器などの用途である「用途・応用産業」、前記の「用途・応用産業」からSCMに要求されるメモリーとしての性能である「メモリ性能」、前記の「メモリ性能」を満たすために、SCMとして研究や技術開発されている技術である「要素技術」、SCMが要求される「メモリ性能」を満たすために「要素技術」が解決すべき技術的課題である「課題」の4つの観点で整理しています。

図1 技術俯瞰図
図1 技術俯瞰図
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 図2に特許調査範囲を示します。特許出願の調査範囲は、半導体メモリー、記憶素子(セル)に関する半導体素子です。

図2 特許調査範囲
図2 特許調査範囲
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