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 我が国においては、高度成長期に集中的に整備されたインフラ設備の老朽化が一斉に進んでおり、インフラ設備の定期的な点検と適切な保全を、いかに効率的に行うのかが課題となっている。近年注目が集まっているIoT関連技術は、インフラ設備の状態監視と維持管理を効率化するための有効なツールになると考えられる。IoTを活用したインフラ設備の維持管理技術に関する特許出願動向を調査した結果、2016年の出願件数は、2010年比で1.7倍以上に伸びていることが明らかになった。今後、幅広い領域でのIoT活用を考えているICT企業(「インフラの構築・運用を支援する企業」)が、インフラ設備を保有し維持管理における課題に直面しているインフラ企業や公共団体と連携する取り組みを更に強化していくことが重要である。また、IoTを活用して運用の効率化を図るには、IoTサービスプラットフォームの整備が不可欠となるが、我が国は情報の一元化・集約化に向けた取り組みに出遅れが目立つ。センシングデータだけではなく、設計・施工データや地図データへの対応も含め、情報の一元化・集約化機能の強化が望まれる。さらに、海外展開に対しては、日本に強みのある要素技術(例えば、道路の分野においては、陸上走行車両、カメラ、画像解析、予測・推定)に着目して、IoT技術のパッケージ化が有力な武器になると考えられる。

 我が国においては、高度成長期に社会資本(インフラ設備)が集中的に整備されてきましたが、半世紀を経てインフラ設備の老朽化が一斉に進んでおり、維持管理すべきインフラ設備は急激に増加しています。

 このため、インフラ設備の定期的な点検と適切な保全を、いかに効率的に行うのかが課題となっています。

 近年注目が集まっているIoT関連技術、例えば、ネットワーク型センサや遠隔モニタリング等のセンシング技術、劣化診断のためのデータ分析技術、及び、取得・収集・分析したデータを記録・管理・活用する技術等は、インフラ設備の状態監視と維持管理を効率化するための有望な技術と考えられています。

 このような背景のもと、技術開発の状況を把握し、技術競争力の状況と今後の展望について検討することを目的として、「令和元年度特許出願技術動向調査」を行い、インフラ設備のIoTを活用した維持管理技術に関する市場動向、政策動向、特許出願動向等を調査して、その実態を明らかにしましたので本稿で紹介します。

 本調査のフレームワーク(技術俯瞰図)を図1に示します。

 本調査では、IoT関連技術がインフラ設備の維持管理にどのように活用されているのかを明らかにするため、「応用産業軸(インフラ設備)」、「技術軸(IoT関連技術、維持管理技術)」、「課題・効果軸」という3つの観点から分析しました。

 「応用産業軸」には、調査対象とするインフラ設備を設定しますが、管理主体が民間である電気、ガス、通信を除いて、道路、鉄道、水道等の61項目を設定しました。

 「技術軸(IoT関連技術)」については、物理的な実体を対象とする「フィジカル層」、物理的な実体の上で処理される情報を対象とする「サイバー層」、フィジカル層とサイバー層をつなぐための「連結層」の3層構造とすることにより、技術要素を整理しました。

 「フィジカル層」の技術要素は、計測対象(ひび・剥離、振動等の10項目)、計測手法(音波・超音波、カメラ等の11項目)、入出力装置搭載機器(ドローン、スマートメーター等の8項目)としました。

 「サイバー層」の技術要素は、データ解析(画像解析、人工知能等の12項目)、データ種別(センサデータ、地図データ等の9項目)とし、また、「連結層」の技術要素は、無線通信技術、クラウド化技術等の5項目としました。

 「技術軸(維持管理技術)」については、設備維持(点検や診断等9項目)に関わる技術に加え、設備運用(交通支援や災害支援等5項目)に関わる技術も広義の維持管理技術と位置付け、分析の対象としました。

 更に、維持管理プロセスの情報流通基盤となる「情報プラットフォーム」については、情報取得(センサがセンシング対象の状況をデジタル情報に変換するプロセス)、情報収集(センサが取得したデジタル情報をネットワーク経由で集めるプロセス)、情報一元化・集約化(ネットワークを通じて集約したデジタル情報を一元管理するプロセス)等6項目のフェーズに分けて、技術要素を整理しました。

 「課題・効果軸」については、費用削減や質的向上等を切り口に、その技術が解決しようとしている課題やその技術によって生み出される効果を抽出しました(35項目)。

図1 本調査のフレームワーク
図1 本調査のフレームワーク
(技術俯瞰図)
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