全5437文字

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、データ科学を用い、効率的に材料開発を行う手法である。従来の試行錯誤を中心とした材料開発手法に取り入れることで、材料開発の時間及びコストの大幅な低減が期待されることから、近年、化学メーカーを中心として、積極的に取り組まれている。MIの特許ファミリー件数は全体として近年増加しており、プロセスの管理を目的とするものが最も多くなっている。実測データの取得が比較的容易な材料の製造プロセスにおいて、MIの社会実装が進みつつあることが分かる。製造プロセス×データ科学(プロセスインフォマティクス)は、今後、ますます重要になると考えられる。

 マテリアルズ・インフォマティクス(MI:Materials Informatics)は、効果的に材料開発を行うデータ科学を用いた新材料開発手法です。「Materials Genome Initiative(米国:2011年発足)」、「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(日本:2015年発足)」などの各国のプロジェクトが既に始まっています。また、MIは素材系メーカーだけでなく、AI技術を開発するIT系メーカーも開発に取り組んでいるという報道がなされており、材料業界に対して大きな環境変化が起き始めています。MI技術の進展は、材料開発工程及びそれを支える研究開発に大きな影響を与えることが予想されます。このような背景の下、MIに関する特許・論文の動向等を調査し、今後の展望について検討しました。その主な内容を本稿で紹介します。

MI(マテリアルズ・インフォマティクス)の定義

 MIは、第4の科学と言われるデータ科学(図1赤枠参照)を用いて、効率的に材料開発を行う新材料開発手法です。ハイスループット材料探索のためのハイスループット合成・評価等によって、得られた系統的な実験・実測データの蓄積と、そのデータマイニングなどのデータ処理、そして機械学習(machine learning)・深層学習(deep learning)などを使ったデータ解析手法・手段を構成要素として含みます。これらの技術の中でも、近年、特に進展が著しいデータ駆動型の人工知能(機械学習・深層学習・ニューラルネットワーク等)が技術進展の主体となっています。このMIの定義に基づいて本技術調査の調査対象を整理すると、 図2のとおりになります。

図1 対象技術範囲模式図 科学研究の4本柱と推論の基本形式の関係:赤枠部分
図1 対象技術範囲模式図 科学研究の4本柱と推論の基本形式の関係:赤枠部分
出典:「マテリアルズ・インフォマティクスによる材料開発と活用集」(2019年)p.3 技術情報協会
[画像のクリックで拡大表示]
図2 本技術調査における調査対象
図2 本技術調査における調査対象
出典:三菱ケミカルリサーチ(MCR)が作成
[画像のクリックで拡大表示]