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 近年、様々なセンシング技術がスポーツの競技やトレーニングをはじめ、一般の人のスポーツや運動の可視化、判定、管理等に使われるようになってきた。センシングによって得られた大量のデータを蓄積し、解析することで、様々なことに活用できるようになってきている。東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、これを契機として国民のスポーツへの関わりを増進させ、ICT技術を活用したスポーツ産業を振興しようとする施策も採られており、VR・ARコンテンツや自由視点映像によるライブストリーミング観戦など、スポーツコンテンツを活用した市場拡大も大いに期待される。規模が大きく伸びると予測されている「みる(スポーツを観戦する)」市場に関連した、映像・音響の生成・編集などの「提示」の技術に関し、中国籍・韓国籍出願人とその他の国籍の出願人とを比較すると、VR・AR技術に対して、中国籍・韓国籍出願人がより注力している。また、「提示」の技術の中でも、「映像編集」「音響生成」については、日本国籍出願人の出願による技術蓄積が多い。これらのことから、市場規模が大きく今後5Gの活用が見込まれる「みる」市場に向けて、「VR・AR観戦」などの観戦体験の向上に資する技術の開発や、日本に優位性があると考えられる「映像編集」「音響生成」などの高度な映像サービスのための技術の活用に注力すべきと考えられる。

スポーツ関連技術とは

 センサーの小型化や測定精度の向上が進み、かつ安価になったことで、センシング技術がスポーツの競技やトレーニング、一般の人のスポーツや運動の可視化、判定、管理等に使われるようになってきています。

 また、IoTやAI、データアナリティクス技術の様々な分野への適用が進んでおり、センシングによって得られた大量のデータを蓄積し、解析することで、競技力の向上やスポーツチーム運営に役立てたり、一般の人にとっても、スポーツや運動に取り組むことで健康増進に向かっているという実感を持たせたり、撮影した映像を共有し仲間との交流を盛り上げたりすることに活用できるようになっています。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、これを契機として国民のスポーツへの関わりを増進させ、ICT技術を活用したスポーツ産業を振興しようとする政策も採られており、VR・ARコンテンツや自由視点映像によるライブストリーミング観戦など、スポーツコンテンツを活用した市場拡大も大いに期待されます。

 このような背景のもと、技術開発の状況を把握し、技術競争力の状況と今後の展望について検討することを目的として、「令和元年度特許出願技術動向調査」を行い、スポーツ関連技術に関する市場動向、政策動向、特許出願動向、研究開発動向等を調査して、その実態を明らかにしました。本調査の主要部分を本稿で紹介します。

 スポーツ関連技術の技術俯瞰図を図1に示します。スポーツ関連技術として、その中心となる対象技術、その実現における技術課題、それらの活用場面、応用産業や波及産業の観点で整理しています。本調査では、競技スポーツだけでなく、一般の人のレクリエーションスポーツ、健康目的の運動を含ませ、スポーツ関連技術が適用される応用産業としては、スポーツチーム運営業、競技場運営業、運動施設のサービス業、スポーツ用品産業、公営ギャンブルなどとしています。

 また、中心となる対象技術は、センシング、解析、提示の3つです。センシングは、観衆や視聴者、選手、チーム、一般の運動する人、運動器具、プレー環境など、スポーツや運動に関わる行動や状況に関するデータをセンサーによって取得するものです。

 解析は、センシングデータや、選手、チーム、一般の運動する人、観衆、視聴者などの行動履歴などのデータを分析・解析・処理するもので、近年は機械学習も活用し、より有用な情報活用が目指されるようになっています。

 提示は、映像・音響を編集・生成し、データを解析した結果からファンにとってうれしい解説情報を加えるなど、スポーツをより楽しく見られるようにするものです。

図1 スポーツ関連技術の技術俯瞰図
図1 スポーツ関連技術の技術俯瞰図
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