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研究開発動向について

 論文発表件数は7,807件で、研究者所属機関国籍・地域別では、欧州国籍(ドイツ除く)の論文が24.9%と最多となっており、米国籍、中国籍、ドイツ籍が続いています。日本国籍の件数が最も少なくなっています。MaaS関連技術に限ると、欧州(ドイツ除く)は、発表件数では他国よりも少ないですが、MaaS関連論文の発表件数が最も多くなっています。

【図13:研究者所属機関国籍・地域別論文発表件数推移及び論文発表件数比率(全体)】
【図13:研究者所属機関国籍・地域別論文発表件数推移及び論文発表件数比率(全体)】
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【図14:研究者所属機関国籍・地域別論文発表件数比率と技術区分別発表件数(MaaS)】
【図14:研究者所属機関国籍・地域別論文発表件数比率と技術区分別発表件数(MaaS)】
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 以上の調査結果を踏まえ、今後、日本のMaaS業界が世界市場において競争力、優位性を持つため、委員会にて以下の内容の提言をまとめました。

 (1)日本では自動運転の製品化に向けた技術開発が活発に行われ、多くの特許が出願されています。しかしながら、自動運転技術の分野において、今後その重要性が一層高まるといえる遠隔操作や遠隔監視技術、通信技術、及び人工知能の技術に関しては、特許出願件数や論文発表件数からみると、他国の存在感は無視できません。将来の技術競争において後塵を拝することのないよう、今後の自動運転技術における重要技術分野の研究開発を強化し、製品開発の競争力を維持・向上すべきです。

 (2)日本の公共交通は、鉄道、バス、タクシーといった分野ごとに事業が形成されており、MaaSの前提となるカーシェアリングやオンデマンド交通をも含めたマルチモーダル連携構築が課題です。事業者間の連携を促すためにも、多様な交通事業者が共通にアクセス可能なデータ収集・共有プラットフォームを、MaaS基盤として構築することが重要です。そして、MaaS基盤を礎として、個別に実用化が進んでいるプローブ情報やバスロケーション、鉄道情報、交通管制、また、鉄道技術において実績のある運行管理などの技術を統合化することを進めるべきです。

 (3)MaaSは、多様な交通手段を組み合わせて起点から終点までの移動手段を切れ目なく提供するものですが、利用者にとっての価値は目的地での活動にあります。地域の活性化もMaaSによって移動の障壁を取り除くことにより、様々な活動への参加を促すことによって達成されます。MaaSの実用化・普及にあたっては、移動手段に閉じた事業モデルではなく、利用者に付加価値を提供する他産業と連携したMaaSサービスを構築することが重要です。

 また、MaaS関連技術に自動運転関連技術を重要な構成要素として取り込むことにより、新規ビジネスモデルの創出機会が拡がります。例えば、MaaS関連技術と自動運転関連技術の融合を技術的視点で捉えたとき、その融合領域に位置する通信技術については我が国も含め各国で研究開発が進められていますが、中国では、モジュール間通信技術への注力が顕著であり、中国に特有の動向といえます。このような各国の動向を注視しながら、新規ビジネスモデルの創出拡大を図ることが必要です。

 (4)自動車市場は高度にグローバル化しており、自動運転の実用化においても「基準調和」と「標準化」の両面から国際的な活動が活発に進められています。自動運転の国際的な安全基準づくり(UNECE WP29)や走行制御の標準化(ISO TC204 WG14)などにおいて、日本のリーダーシップが国際的に評価されてきた経緯があり、このような国際的な活動においては、サイバー・セキュリティやソフトウエア・アップデートの分野で得た国際的な評価を基に、引き続きリーダーシップを継続的に発揮し、国際的な基準調和及び標準化を目指していくことが期待されます。

 (5)新型コロナウィルス感染症の拡大により、人々の生活様式や働き方が大きく変わり、所有から利用への変化が見られていた利用者意識を含め、モビリティー分野にも多大な影響が及びました。移動に対する考え方が変わった「新たな日常」では、求められるモビリティーサービスも変化します。ウィズコロナ/ポストコロナ時代の新たなサービスにおいてMaaS関連技術や自動運転関連技術への期待が高まるなかで、これまでに培った技術力も充分に活かした技術開発によって新しい移動ニーズにいち早く応え、新たな日常を先取りしていくことが期待されます。