現在、ICT環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータを活用した新たな学習として“EdTech”分野への関心が全世界的に高まっている。教育分野における情報通信技術の活用としては、学習の個別最適化や指導者支援に関する技術が注目されており、これらの技術において人工知能を利用した開発が進んでいる。今後も、教育分野における情報通信技術の活用として、特に人工知能を利用した出願の増加が予想されるところ、我が国においては、GIGAスクール構想等により整備された教育ICTのハード面での基盤を有効活用するための技術開発が期待される。
1.はじめに
我が国においては、Society5.0の到来を踏まえ学習指導要領が改訂され、情報活用能力が学習の基盤となる資質・能力へと位置付けられています。また、小学校においてプログラミング教育が必修化されることとなり、今後の学習活動において積極的にICTを活用することが想定されています。そして、GIGAスクール構想に基づき「1人1台端末」等、学校におけるICT環境の整備が着実に進められてきています。このような動きは諸外国においても同様であり、各国においてSTEAM教育(STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の略)やICTを活用した教育への注力がなされており、ICT環境を基盤とした先端技術・教育ビッグデータを活用した新たな学習として“EdTech”分野への関心が全世界的に高まっています。
このような状況下、「令和3年度特許出願技術動向調査」において、「教育分野における情報通信技術の活用」(以降、「教育ICT」という)に関する国内外の技術発展状況、研究開発状況を含む技術動向を調査し、今後の展望について検討しました。本稿ではこの調査の主要部分を紹介します。
2.技術俯瞰図
図1に教育ICT関連技術の技術俯瞰図を示します。学びの観点から、「学習者」、「指導者・協力者(手段)」、「学習コンテンツ」、「学習形態」、「学習・指導の記録」の5つの概念に分類するとともに、テクノロジーの観点から、「ソフトウエアにおける技術的特徴」と「ハードウエアにおける技術的特徴」の2つの概念に分類しました。