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 新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)をはじめ、ウイルス感染症への対策は世界的に大きな課題となっている。このような背景の下、「令和3年度特許出願技術動向調査」において、ウイルス感染症対策のうち、予防・治療技術及びウイルス検出・診断技術について、特許出願動向、研究開発動向等の調査を行った。その結果、予防・治療技術における方法・手段(モダリティー)、検出・診断技術の検出対象に関して、日本と他国との間で全体的な傾向に大きな違いは見られなかったが、mRNAワクチンや次世代シーケンシングによる検出・診断といったCOVID-19流行開始後に実用化が進んだ最新技術に関しては、日本は出遅れていることが確認された。

はじめに

 感染症は、環境(大気、水、土壌、そこに生息する生物)中に存在する病原体が体内に侵入することで引き起こされる疾患です。ウイルスにより引き起こされるウイルス感染症は、近年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめ、世界的に大きな問題となっています。

 ウイルス感染症対策は、ウイルスの体内への侵入を防止・軽減する対策(感染経路に関わる対策)と、体内に入ったウイルスへの対策とに大別されます。前者はいかにウイルスとの接触機会を減らすかに尽きますが、後者ではウイルスの増殖サイクルの阻害、宿主の免疫機構への介入、あるいは付随する症状の緩和・抑制が有効であり、医薬(予防薬、治療薬)が中心となります。また、感染の有無、感染状況の把握のためのウイルスの検出・診断技術も広い意味で、ウイルス感染症対策に含まれます。

 本調査においてはウイルス感染症対策のうち、予防・治療技術(抗ウイルス剤、ワクチン、付随する症状を緩和・抑制する医薬)及びウイルス検出・診断技術(核酸分析技術、抗原分析技術、抗体分析技術等)に対象を絞り、ウイルス感染症対策を構成する技術(要素技術)、基盤技術、応用分野に加え、適用対象となる動物も含めて調査を行いました。技術俯瞰図を図1に示します。

図1 ウイルス感染症対策の技術俯瞰図
図1 ウイルス感染症対策の技術俯瞰図
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