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 パワーデバイスは、様々な分野で応用されており、省エネルギー化を目指してさらなる性能向上が求められている。パワーデバイス素材の中でもシリコン(Si)結晶基板を使ったパワーデバイスでの特性改善が限界に近づきつつある一方で、化合物半導体のGaN(窒化ガリウム)を使ったデバイスは、Siデバイスと比べて、ドリフト層の厚さを薄くでき、熱損失の原因となるオン抵抗を小さくできるという特徴がある。

 このような背景の下、「令和3年度特許出願技術動向調査」において、GaNパワーデバイスに関する市場動向、政策動向、特許出願動向、研究開発動向等の調査を行ったので、その主要部分を紹介する。

はじめに

 パワーデバイスは、鉄道や自動車等の車両、冷蔵庫やエアコンなどの家庭電化製品、パソコンやスマートフォン等の情報通信機器、発電・送電システム等、様々な分野で応用されており、省エネルギー化を目指してさらなる性能向上が求められています。特に世界の2050年カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)への道筋の中で、グリーン成長戦略とともに新たな産業創出の観点からも重要な位置付けとなっており、成長領域としての期待も高まっています。

 パワーデバイス素材の中でもシリコン(Si)結晶基板を使ったパワーデバイスでの特性改善が限界に近づきつつあります。これに対し、化合物半導体のGaNの材料特性は、バンドギャップはSiの約3倍の大きさで、絶縁破壊電界は約11倍です。このため、GaNデバイスはSiデバイスよりドリフト層の厚さを薄くでき、熱損失の原因となるオン抵抗を小さくできます。

 このような背景の下、「令和3年度特許出願技術動向調査」において、GaNパワーデバイスに関する市場動向、政策動向、特許出願動向、研究開発動向等の調査を行い、その実態を明らかにしました。

 GaNパワーデバイスの技術俯瞰図を図1に示します。要素技術としては、材料から製品に至る、物の流れに沿って整理しました。材料については、エピ用基板、エピ層及びその間に挿入するバッファ層のそれぞれに特有の材料技術に加え、材料の組み合せにも注目しました。

図1  GaNパワーデバイスの技術俯瞰図
図1  GaNパワーデバイスの技術俯瞰図
※赤字の項目は平成28年度調査時の技術俯瞰図に対し追加された技術区分である。
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調査範囲

  • 特許文献

 出願年(優先権主張年):2009年~2019年(2008年以前のデータについては、平成28 年度に実施された同テーマの調査の結果を利用しています。)

 出願先国・地域:日本、米国、欧州、中国及び韓国

 使用した商用データベース:Derwent World Patents Index(DWPI)(キャメロット ユーケイ ビッドコ・リミテッド(英国)の登録商標)

※本調査において、「欧州への出願」は、欧州特許条約(EPC)に基づく欧州特許庁及びEPC加盟国(本調査で使用したデータベース(DWPI)に収録された出願先国 に限る)への出願を意味します。
※本調査の出願人国籍・地域別出願動向における「欧州籍の出願」とは、EPC加盟国である38か国 の国籍の出願人からの出願とします。
  • 非特許文献

発行年:2009年~2020年

使用した商用データベース:Scopus(エルゼビア ビーブイ(オランダ)の登録商標)及びIEEE Xplore

調査手法

  • 特許文献

 GaNパワーデバイスに関する特許文献をデータベースから抽出するために、国際特許分類、関連するキーワード等を組み合わせて検索を行いました。抽出された文献について、人手による特許公報(明細書等)の読込解析を行い、ノイズ(調査テーマに関連しない特許文献)を排除することによって調査対象となる母集団を得た上で、特許文献ごとに適切な技術区分を付与しました(母集団とされた特許文献の書誌情報や技術区分付与結果は、解析・集計され、特許動向の分析に用いました。)。

  • 非特許文献

 GaNパワーデバイスに関する論文をデータベースから抽出するために、キーワードを組み合わせて検索を行いました。抽出された論文について、人手による抄録の読込解析を行い、ノイズ(調査テーマに関連しない論文)を排除することによって調査対象となる母集団を得た上で、論文ごとに適切な技術区分を付与しました(母集団とされた論文の書誌情報や技術区分付与結果は、解析・集計され、研究開発動向の分析に用いました。)。