PR
本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第121巻第1191号(2018年2月)pp.8-11に掲載された「自動運転とモビリティ社会」の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 自動運転(automated driving)社会の到来が間近と喧伝され、複数の自動車メーカーが自動運転車の販売開始や販売予定を明言している。しかし、現代の道路交通社会には、道路交通法などの交通ルール、車検制度や車両安全性を規定する保安基準、交通事故向けの損害保険制度、自動車関連諸税や有料道路制度など多様な社会制度、システムが存在する。自動車の発明当初も当時の社会制度やルールに規制されて議論を呼び、社会的衝突を生みながら徐々に受容されていったようだ。

 内閣府では、2014年度より5年間計画で戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を進めている。選定された11テーマのうち自動走行システム(SIP-adus: Automated Driving for Universal Services)は、次世代インフラ分野テーマの一つで、交通事故低減、自動運転の実現と普及、および東京オリンピック・パラリンピック2020における実現を目標としている。

 自動運転の研究技術開発やその実現には、交通規制と取り締まりを管轄する警察庁、通信免許を管理する総務省、新規自動車関連産業を推進する経済産業省、および自動車の保安基準などを管轄する国土交通省自動車局と、道路行政を管轄する同・道路局が関係するため、これら省庁がSIP下で連携・推進する意義は大きい。むろん自動運転するクルマの開発・生産は民間の競争領域だが、その実現と普及には非競争領域における国を挙げた協調が必要との考えからSIPが推進されている。

自動運転のレベルと進展は連動するか

 運転の自動化にはさまざまなレベルがある。アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)は、前方車がなければ自動的に目標速度を維持し続けるクルーズ・コントロール(CC)機能を拡張し、前方車に追いつくと自動的に速度と車間距離を調整する。こうした1つだけの機能自動化をレベル1とし、全体を5段階に分ける定義が、ほぼ国際標準となっている。

 レベル2までは、あくまで人間の運転を高度に支援する自動化技術と解釈でき、ACCに車線変更や合流、車庫入れや縦列駐車など難しい運転操作が自動化されれば、その訓練抜きでレベル2自動車を運転できる新たな免許制度を導入できるかもしれない。また、レベル4、5には運転者の概念がなく無人運転も含まれ、利用者は免許を持つ必要はない。

 ところがレベル3では、自動運転システムの作動継続が困難になると人間に交代する必要がある。どんな条件でそうなるのか、いつ生じるか分からないだろうから、交代要員はレベル3車両の運動性能を熟知し、置かれた環境を瞬時に判断し運転を開始できる高度に訓練されたドライバーが想定される。こうしてみると自動運転の普及と共に自動運転レベルが進むとも限らず、交通渋滞低減に繋がるか定かではない。