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本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第121巻第1197号(2018年8月)pp.38-39に掲載された「上下の揺れを抑えて快適な乗り心地に (公財)鉄道総合技術研究所・日立オートモティブシステムズ(株)~2017年度日本機械学会賞(技術)受賞『鉄道車両用上下制振制御システムの開発』」の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 鉄道総合技術研究所と日立オートモティブシステムズは、世界で初めて鉄道車両用「上下制振制御システム」を実用化し、2017年度日本機械学会賞(技術賞)を受賞した(図1、2)。加速度センサの測定値をもとに車体の振動低減に必要な力を計算し、可変減衰上下動ダンパーに指令電流を送ってダンパーで減衰力を発生させ、車体の振動を抑制するもの。ローカル線を走る観光特急列車や国内全てのクルーズトレインに搭載され、乗り心地を向上させている。

図1 開発した鉄道⾞両⽤上下制振制御システム
図1 開発した鉄道⾞両⽤上下制振制御システム
開発した装置の実⾞への搭載状況(JR九州 77系客⾞「ななつ星in九州」)
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図2 システムの構成
図2 システムの構成
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新幹線の上下振動を抑える

 走行中の車体に発生する上下方向の振動で乗り心地に大きく影響するのは、車体変形を伴わず0.5~1秒周期で動く「車体剛体振動」と、変形を伴い0.1秒周期で動く「車体曲げ振動」がある。当初、主に前者を抑制する技術開発が進められ、走行試験が行われたが、結果的に新幹線の乗り心地向上に重要なのは後者と分かった。当時、この振動を低減する研究事例は多々あったが、実車で良好な効果が得られた例はなかった。

 そこで発想を転換して生まれたのが、車体曲げ振動の主原因である台車の振動を、台車側で低減し車体の振動を抑えるアイデアだ。その実現には、車両で最も振動が大きいばね下(車輪からの振動が直接伝わる部分)で使える、応答性の良い可変減衰ダンパー(発生力を制御できるダンパー)が必要だったため、これを日立オートモティブシステムズが開発した。

 新幹線での走行試験では、車体の曲げ振動は大幅に減少した。しかし、成果は出しても、営業車への採用のオファーは何年も来なかった。開発チームは「いつかきっとこの技術が求められる日が来る」と研究を続けた。

 車体曲げ振動の低減にある程度めどが立つと、再び車体剛体振動低減への取り組みが始まった。システム構成と制御方法は発案済みだったため、あとは台車-車体間に取り付ける可変減衰上下動ダンパーの開発である。その頃、走行試験可能な新幹線車両がなく、その一方在来線で適した車両が発見されたことから、在来線での上下制振制御システムの開発を開始した。この試みが、後に実用化に至るターニングポイントとなった。