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 戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、グローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では品質管理総合大会の位置づけで部・課長層を主対象にした「クオリティフォーラム2020」(2020年11月25~27日)を開催する。同フォーラムの開催に先立ち、登壇者の1人である東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンターチーフエバンジェリストの福本 勲氏に聞いた、デジタルトランスフォーメーションに対する考えを3回に分けてお届けする。(聞き手は廣川 州伸=ビジネス作家)

いただいた名刺の肩書に「チーフエバンジェリスト」とあります。最近、注目されている職種です。

福本:2020年4月から、エバンジェリストの肩書となりました。デジタル化のトレンドや最新テクノロジー、自社ソリューションの特長などをわかりやすく伝える伝道師(Evangelist)の役割を担っています。

福本 勲(ふくもと・いさお)
福本 勲(ふくもと・いさお)
東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はデジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担う。2015年から一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)のエバンジェリストを務める。その他、複数の団体で委員などを務めている。2019年12月にフロンティアワン 鍋野敬一郎氏、電通国際情報サービス 幸坂知樹氏との共著で『デジタルファースト・ソサエティ』を出版。(出所:東芝)
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 19年9月には、デジタル化時代に向かっていくためヒトやモノ、情報、知識が集まる場として東芝デジタルソリューションズのオウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」を立ち上げ、編集長を務めています。DiGiTAL CONVENTiONでは、経営、イノベーション、テクノロジー、共創の事例や、イベントのリポートなども発信しています。ぜひ、こちらもご覧いただき、いろいろな方から、ご意見をいただければと思っています。

 私がWebメディアに連載したり、オウンドメディアの編集長の役割を担ったりしているのは、みなさんと今、何が起きているかを共有し、何をしていかなければならないかを一緒に考えていきたいからです。

 デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をもたらす第4次産業革命の時代に起きていること、やるべきことを多くのみなさんと共有していくのは、とても大事だと感じています。

 これからの日本では生産年齢人口が減り、その結果、総労働時間も減少し続けます。一定時間内に生み出せる付加価値を高めなければ、生み出す総付加価値が減るということになります。昨今、働き方改革が注目されていますが、どうしても労働時間の削減ばかりに目が行きがちです。しかし、働き方そのものを変えずに労働時間を削減すると、単に総付加価値が減って企業が競争力を失うだけになります。単位時間あたりの付加価値を高めるため、デジタル技術を使う必要性も出てくると考えています。

新しい価値を創造するため、デジタル技術を積極的に使うということでしょうか。

福本:何が何でもデジタル技術とは思っていません。デジタル技術に任せるところは任せて、人は「人である必要があるところ」に集中する働き方に変えていくことが必要だと考えています。

 製造業において、日本の強みは現場力や熟練技術者による匠(たくみ)の技にあるといわれてきましたが、技の伝承という点に課題があるともいわれてきました。この課題への対応と生産性向上を両立するためには、技能を「人から人」へ受け渡すだけではなく、「人から機械へ」受け渡す考え方も必要でしょう。ただ「人から人へ」技能を伝承する場合も「人から機械へ」伝承する場合も、それらの知見を「見える化」することが求められます。人にしかできないところの見極めができれば、デジタルへの伝承も可能になるはずです。

 また技能をデジタル化して伝承することで、人工知能(AI)活用にもつながり、違った切り口の見方を提示できる。そうなれば人とAIで相互に知識を補完することも可能ですし、技術を組み合わせることで新たな知見を生み、新しい価値を生む源にもなるかもしれません。