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 2020年代は欧州、特にドイツの主要自動車メーカーが電気自動車(EV)の本格的な量産を開始する。これには動力源となる電池システムの生産体制の構築が重要となる一方で、ドイツの“御三家”(ジャーマン3)の間では、電池の生産ネットワーク構築に関するスタンスは微妙に異なる。それぞれのメーカーの進捗状況を含めた、電池システムの生産体制構築の取り組みを紹介する。

ダイムラーは傘下の電池メーカーによる生産

 ダイムラー(Daimler)の電池生産の中心となるザクセン州カメンツ(Kamenz)工場は、12年の生産開始以来、20万個超の駆動用リチウムイオン電池パックを生産している(図1、2)。19年から「メルセデス・ベンツ」ブランドとして初の量産EVとなった「EQC」の駆動用リチウムイオン電池モジュール/パックの量産を開始した(図3、4)。電池セルは、外部の電池メーカーから調達している。

図1 カメンツ工場の全景と同工場の敷地内を走るEV「EQC」
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図1 カメンツ工場の全景と同工場の敷地内を走るEV「EQC」
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図1 カメンツ工場の全景と同工場の敷地内を走るEV「EQC」
ダイムラーのザクセン州のカメンツ工場は8万平方メートルの敷地内に2つの電池生産工場を有しており、約1300人の従業員を抱えている。現在はメルセデス・ベンツのEV「EQC」用電池システムを生産する。(出所:Daimler)
図2 カメンツ工場の内部風景
図2 カメンツ工場の内部風景
現状ではEQC用の電池システム生産のために、30ステーションで生産工程を構築した。(出所:Daimler)
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図3 EQCの電池パック
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図3 EQCの電池パック
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図3 EQCの電池パック
EQCの床下に配置される。(出所:Daimler)
図4 EQCに搭載する電池モジュールの内部写真
図4 EQCに搭載する電池モジュールの内部写真
EQCの電池パックは、48セルから成るモジュール2つと、72セルから成るモジュール4つで構成する。(出所:Daimler)
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 ダイムラーは駆動用電池モジュール/パックの世界的生産ネットワークを3大陸の7地域、9工場によって構築する予定だが、生産は傘下の電池メーカーであるドイチェ・アキュモーティブ(Deutsche Accumotive)が手がけている(図5)。ドイチェ・アキュモーティブは、09年に設立され、メルセデス・ベンツの駆動用電池モジュール/パックの生産を一手に担う。

図5 ダイムラーの世界的な電池生産ネットワーク
図5 ダイムラーの世界的な電池生産ネットワーク
(出所:Daimler)
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 カメンツ工場には、ダイムラーの電池の研究開発会社「メルセデス・ベンツ・エネジー(Mercedes-Benz Energy)」が16年に設立されており、自動車用技術を基本に定置型を含めた電池システムの開発と供給を手がける。

 駆動用電池モジュール/パックの生産施設は、ドイツ(カメンツ、ウンターテュルクハイム、ジンデルフィング)、米国(タスカルーサ)、中国(北京)、タイ(バンコク)に設ける計画で、アジア地域では19年にバンコクのトンブリ工場を稼働開始。中国では提携関係にある北京汽車とともに工場を立ち上げた。欧州でも20年中にポーランド(ヤヴォル)工場で生産を開始し、ウンターテュルクハイム工場とジンデルフィング工場、米国のタスカルーサ工場が現在建設中とされる。

 カメンツ第1工場は、12年にメルセデス・ベンツ、スマート、小型商用車用の電池モジュール/パックの生産を開始、18年にはカメンツ第2工場を稼働させ、ダイムラーは電池生産を拡大してきた。メルセデス・ベンツのハイブリッド車(HEV)/プラグインハイブリッド車(PHEV)/EVのブランド「EQ」に向けた電池パックの年間生産量は50万台に達しようとしている。

 メルセデス・ベンツは「EQブースト」(48V簡易HEV)、「EQパワー」(HEV、PHEV)、「EQ」(EV)とパワートレーンによって名称を使い分けつつ電動化を進めている。20年末には5車種のEV、20車種のPHEVを設定、今後数年間に10車種のEVの生産を開始する予定としており、30年までには乗用車販売の50%以上をPHEVもしくはEVとすることを目標に掲げている。