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 ダイカストメーカーであるリョービの自動車向けの量産・試作品を紹介する。同社は以前から手がけてきたアルミニウム(Al)合金を使うパワートレーン系部品に加え、電動化の部品開発に手を広げ、自動車メーカーや1次部品メーカーへ提案を進めている。

量産品から進化するモーターケース

 2020年1月にドイツ・ニュルンベルクで開催された、圧力鋳造技術専門見本市「ユーロガス2020」において、同社が展示した製品群について技術的内容とともに述べる(図1)。

図1 リョービの実車大展示物
図1 リョービの実車大展示物
2020年1月にドイツ・ニュルンベルクで開催された圧力鋳造技術専門見本市「ユーロガス2020」において紹介された同社の製品群。電池ケースなど、電動化部品を中心に組み合わせた実車大の展示。写真右側が車両前方で、サブフレームを組み合わせている。
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 同社は開発を進めているモーター用部品として、新設計・生産技術による2種類のモーターケースの試作品を披露した(図2)。

 従来のモーター単体のケースには、1ピースタイプ[ウオータージャケット(冷却水路)を一体成形]と2ピースタイプ(インナー/アウター部品を組みあわせてウオータージャケットを成形)がある。前者は金型でウオータージャケットを成形するために抜き勾配(金型を抜くために設定される傾斜)が必要となるのに対し、2ピースタイプは内外筒を組み合わせており抜き勾配が不要なため、より軽量・小型に製作することができる。しかし現状では、生産コスト面で1ピースタイプに自動車メーカーのニーズがあるという。

図2 試作したモーターケース
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図2 試作したモーターケース
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図2 試作したモーターケース
写真左側が従来品、写真右側が開発品。従来品の抜き勾配は1度であり、中央付近でバリ抜きが必要。開発品は抜き勾配を極小化することにより、1ピース構造を採用しつつバリ抜きコストの削減や冷却性能の向上を図った。右の図は、従来品と開発品の構造の違いの説明。

 同社が試作した1ピース型モーターケースは、金型のウオータージャケットの設計において、通常1度以上に設定している抜き勾配を片側0度にすることで、冷却性能の向上を実現するとともに、ウオータージャケットのバリ抜きコストを削減した。なお、同社は量産品として日産「リーフ」用のモーターカバーも展示した(図3)。

図3 日産「リーフ」用モーターカバー
図3 日産「リーフ」用モーターカバー
EVの日産リーフが採用したモーターの前後端を覆うカバー。
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 電動アクスルケースの開発では、薄肉化による軽量化やシール部の接合コスト(Oリング、ボルト締結)の削減などを狙い、FSW(摩擦かくはん接合)方式を利用して試作した(図4)。FSW方式では、月産1万台の場合、ボルト締結時と比較して約40%接合コストを削減できるという。また、レーザー溶接による試作も行っており、どちらもEV(電気自動車)での採用を狙う。

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図4 電動アクスルケースとその冷却回路
図4 電動アクスルケースとその冷却回路
(上)2ピース構造のEV用電動アクスルケース。EVでの採用を狙い開発した試作品。薄肉化による軽量化と、溶接技術の開発による接合コストの削減が特徴。(下)2ピースの接合で冷却回路を成形する。
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 EV用の電池ケースに関しても試作を実施している。現在、国内で生産されるEVの電池ケースは鋼板プレス品が多く、部品点数増加によって溶接・組み立て工数が増えることや、耐食性を向上させるための塗装コストが課題となっているが、ダイカスト製の電池ケースでは、締結用のブラケットやボス、剛性向上のためのリブ、フランジなどを一体成形できる。さらに、Al合金は耐食性が高いため塗装工程を要しないなど、設備投資を抑えられることも利点といえる。

 リョービの電動駆動系の量産品では、米GMのレンジエクステンダー搭載のPHEV「シボレー・ボルト」「キャデラックELR」(前輪駆動)向けに開発された電動アクスルケースや、日本メーカーにはEV用モーターケースを供給している(図5、6)。

図5 GMに供給した電動アクスルケース
図5 GMに供給した電動アクスルケース
GMのレンジエクステンダー搭載のPHEV「シボレー・ボルト」「キャデラックELR」(前輪駆動仕様)向けに開発された電動アクスルケース。
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図6 小型EV用モーターケース
図6 小型EV用モーターケース
量産EVに搭載した、グラビティ(重力)鋳造品となるモーターケース。リョービのグループ企業である東京軽合金製作所製。