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 1997年に、世界初の量産ハイブリッド車(HEV)として誕生したトヨタ自動車の「プリウス」は、四半世紀の歳月を経て5代目に至った。過去、4世代にわたるプリウスの歴史は、車名に込められた「先駆け」の意味が示す通り、HEVの進化をけん引するものだった。

新型プリウスのPHEVプロトタイプ
新型プリウスのPHEVプロトタイプ
(写真:筆者が撮影)
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 初代は、シリーズ式かパラレル式かとそれまで考えられてきたハイブリッド方式に、2つのモーター/発電機を用いることで、シリーズ・パラレル式というトヨタ独創のHEVとした。その実現には、遊星歯車を使った動力分割機構の発想も大きな役割を果たしている。

 2代目は、初代の4ドアセダンから4ドアハッチバックへ車両形態を変え、加えて「ハイブリッド・シナジー・ドライブ」の概念を持ち込み、HEVが単に燃費向上を狙った環境車というだけでなく、走りのよいクルマであることを明らかにした。2代目の後半から補助金効果などもあり販売台数が伸び、タクシーでも使われだした。

 3代目では、車両価格を見据えた拡販を目指す開発がなされ、そればかりか、ガソリンエンジンの排気量をそれまでの1.5Lから1.8Lへあえて拡大することにより、燃費をいっそう向上させるという、総合エネルギーマネジメントの技術的躍進があった。

 4代目は、TNGA(Toyota New Global Architecture)を採用し、一段階上の走行性能や快適性を追求した。その進化版として、「C-HR」が生まれ、「カローラ」が飛躍した。

 では、5代目の新型プリウスはどうであろうか。

新型プリウスのPHEVプロトタイプ
新型プリウスのPHEVプロトタイプ
(写真:筆者が撮影)
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 試乗は、新たに排気量を増した2.0Lと、従来の1.8LガソリンエンジンのHEVにそれぞれ乗り、また2.0Lでは四輪駆動の「E-Four」も運転した。さらに、2023年3月ごろに正式発売となるプラグインハイブリッド車(PHEV)のプロトタイプにも、サーキットコース内で数周乗ることができた。

PHEVプロトタイプの運転席写真
PHEVプロトタイプの運転席写真
新型プリウスの運転席は体をきちんと支え、運転操作はしやすい。(写真:筆者が撮影)
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 販売の中心となる2.0LガソリンエンジンのHEVは、走りだすと同時に剛性が高められた車体の効果を体感し、開発の狙い通りに加速がよく、静粛性も優れていることを実感した。前型からの進歩はうかがえたが、そもそもプリウスという車名が意味するところの「先駆け」は見えてこない。

 先駆けという意味では、2021年に2代目となった「アクア」において、時速40kmあたりまでモーター走行できる「快感ペダル」で「トヨタ・ハイブリッド・システム(THS)」の未来を予感させた。続いて、2022年の新型「クラウン」ではガソリン・ターボ・エンジンと組み合わせた「デュアルブースト・ハイブリッドシステム」が、これまでのトヨタのHEVにない走りを味わわせた。

 ところが今回の新型プリウスは、性能の進歩はあってもHEVとして先駆ける何かを感じなかった。