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【質問1】NVIDIAの契約改定は、妥当だと思いますか、それとも専横的だと思いますか?
【回答】エンジニアリングの観点からは専横的に見える

 商習慣とは、長い間に定着してしまう不思議なものだ。中には、ある側面から見れば、不合理・理不尽に見えるものもある。しかし、別の視点から見直すと、実は相応の経済合理性があるのかもしれないと思わせる部分もある。

 例えば、かつての日本では、「半導体はMooreの法則で値下がりするもの」と決めつけて値下げ要求をしてくる顧客に対し、「それでは売りません」と言えない雰囲気があった。半導体メーカーはカーストの低位にあると自虐的な笑い話になるばかり。結局儲からないビジネス、投資回収リスクのあるビジネスと見なされて、日本の多くの総合電機メーカーでは半導体(特に先端集積回路ビジネス)を連結決算対象外にしてしまった。

 一方、世界的に見れば半導体産業は他産業に比べても十分成長しており、莫大な利益を出している会社もある。人工知能など先進システムの中では主役となるほどの存在感のある構成要素であり、これをやらずに何をやるのかと言いたくなるほど重要性は高い。それにもかかわらず、日本では安全第一の発想が根付き、そこに注力する目立った動きはない。

 日本企業の何が悪くて、本来価値の高いビジネスを維持できなかったのか。おそらく、何社も同じような製品を供給したため足元を見られ、契約以上の要求を突きつけられても顧客満足第一と言って受け入れてしまったことが原因だと思われる注1)。海外企業ではあり得ない話である。さらに銀行は、資金回収リスクのある企業・ビジネスを嫌うため、世界を股に掛けた大型投資を必要とする半導体産業、特に製造において資金力でシェア争いをする製品は日本には向いていなかった。これは、汎用品であっても、カスタム品であっても同様だろう。その上、銀行を説得できないようなビジネスプランだったとすれば、日本の半導体産業の凋落は日本という環境における経済的焼きなましプロセスの結果だったのかとも思ってしまう注2)

目的外使用の不担保、瑕疵担保責任

 本題のNVIDIA社の件である。特に海外メーカーの製品に見られることだが、電気製品の注意書きに「これは食べ物ではありません」と書いていることがある。笑ってしまうが、笑っていられない訴訟案件があったのだろう。目的外使用の不担保は当然であるが、スペック外の使用は現実にはあり得ないことではない。

 例えば1000V以上の高電圧を発生させるラケット型電気蚊取り器では、耐圧400V程度のコンデンサーが使われているらしい(参照資料)。コンデンサーのメーカーからみれば、明らかに目的外の使用と思われる。常時高圧を発生させるわけではなく、特にフィルムコンデンサーでは短絡しても電極消失による自己修復機能があるので、一夏二夏くらいは使えるのだろう。爆発や火災の危険がなければ、それでもよい世界である。コンデンサーのメーカーは嫌がるだろうが使い方をコントロールしようがない。

 一方、NVIDIAは、ゲーム用グラフィックスエンジン「GeForce」のクラウドサービスへの使用を禁じたとのことである。それが、代替製品がはるかに高額なため「ぼったくり」まがいに受け取られてしまっている。だが信頼性は使用部材に応じてユーザーが設計するものであり、すぐ劣化するマシーンは市場から淘汰されるのが原則。実態は別として、半導体メーカーは普通売買契約には「売った後の保証はしない」と書いている(筆者の経験では)。逆にNVIDIAが信頼性を考慮して用途まで制限するのならば、許諾製品では瑕疵(かし)不担保ではなく全責任取ってくれるのかと言いたくなってくる。そうでないとフェアーな取引関係ではなくなってしまうからだ。