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【質問1】aiboを復活させたことで、ソニーの技術開発や製品開発に、どのような効果が及ぶと思われますか?
【回答】自由闊達にして愉快なるソニーの復活ムードを盛り上げて、人々に驚きと感動を与え、ライフスタイルを変えてしまうような次の画期的な製品開発のきっかけとしての効果

 1946年、ソニー創業者井深大氏が起草した設立趣意書の会社設立の目的の第一項に有名な「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」という言葉が記されている。

 「人のやらないことをやる」というスローガンを掲げていた古き良きソニーの企業文化を端的に表した言葉であり、井深氏の自叙伝(私の履歴書)のタイトル「井深大 自由闊達にして愉快なる」(図1)にもこの設立趣意書の言葉が使われている。1999年に発売された犬型ロボットAIBOは、この言葉を象徴するような画期的製品として、人々から驚きと感動を持って受け入れられた。

図1 日本経済新聞社刊「井深大 自由闊達にして愉快なる」の表紙
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図1 日本経済新聞社刊「井深大 自由闊達にして愉快なる」の表紙

 当時の出井伸之社長は、「Re-Generation(第2創業)」を新たなスローガンに掲げ、自分こそが新たな創業者だと高らかに宣言し、先代創業者の設立趣意書を封印してしまった。「ロボットは19世紀の技術で時代遅れ」という見方に固執した出井社長からの批判の中で、AIBOは難産だったことを開発責任者だった元上席常務の土井利忠氏は述懐している1),2)

 後任の経営者たちも、エンジニアが自由闊達に仕事をされてはマネジメントに支障を来すとして、設立趣意書を否定するような発言を繰り返し、代わりに出井社長が師と仰ぐ米ゼネラル・エレクトリック(General Electric) 会長だったJack Welch氏が出井氏に直伝したシックスシグマに基づくカスタマーサティスファクション(CS:顧客を経営者や上司に読み替えたトップダウン)プログラムをはじめ、さまざまな欧米流管理手段を持ち込んだ3)。トップがCSを叫べば叫ぶほど、ソニー製品はますます色あせてカスタマーが離れていくという皮肉な結果が生じ、業績は悪化するばかりだった。そしてリストラに拍車が掛かっていった4)。そんな中で、2006年になると、世間からも社員からも惜しまれながらAIBOの製造・販売は中止されてしまった(製造中止に至る内部事情は質問3の回答参照)。

aibo復活はソニー復活ムードを盛り上げてはいるが・・・

 今回のaibo復活は、自由闊達にして愉快なるソニー、 画期的な商品で人々に感動を与えてくれるソニーの復活の象徴として、マスコミにも好意的に受け止められている。平井社長もそれを狙って、わざわざAIBOの復活を決めたのであろう。平井社長は発表の場で「ユーザーに感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続けることが、ソニーのミッション」と胸を張っていたが、私には驚きも感動もなかった。ソニー復活をアピールするために、てっとりばやくAIBOをaiboに替えて利用しただけにしか思えなかった。

 それはなぜか。初代AIBOの発売は、0から1の創成であるからインパクトがあり、人々に驚きと感動を与えたが、今回のaiboは、「ヒトのやらないことをやる」はずのソニーが、1を模倣して1を生んだに過ぎないからだ。それでは初代AIBOの時のようなサプライズを与えることはできない。それが言い過ぎなら、1から1.1を生んだとでもしておこうか。 

 初代発売開始から20年近く経過し、この間IT や半導体技術は指数関数的に進歩している。aiboの訴求点は、クラウドに接続できるとか、プロセッサーの性能が大きく向上したとか、学習効率が格段にアップしたとか、自由度が20軸から22軸になったなど、できて当たり前のことばかりではないか。2006年以来AIBOの「失われた12年」の技術をいろいろ盛り込んでみましたというだけで意外性がまるでない。

 今回のaiboの開発責任者であるソニー ビジネスエグゼクティブ 事業開発プラットフォーム AIロボティクスビジネスグループ 部門長の川西 泉氏でさえ「(初代AIBOは)やっぱり今見ても新鮮なんですよ。『こういうことができたんだな』とか『ここまでできてたんだな』とか」と述べていた5)

 ソニー復活の象徴としてのaibo再登場により ソニーの復活ムードを盛り上げることには成功したかもしれない。しかし、2番煎じのロボット犬がまた昔の名前で(大文字のAIBOを小文字のaiboに変えて)出てきましたというぐらいでは, ソニー復活とは言えまい。かつてのソニーや米アップル(apple)は、画期的な製品を世に送り出して人々にサプライズと感動を与え、社会にインパクトを与え、人々の生活スタイルすら変えてきた。

 ソニーは今回のaibo復活をきっかけに、AIBOを含めて従来の枠に何らとらわれることなく人々に真の驚きと感動を与える次なる製品を世に問うてほしいものだ。その時が真のソニー復活の時になるだろう。

■参考文献
1)「AIBOの開発責任者、土井利忠の述懐その1「時代遅れという批判の中でAIBOは生まれた」、その2「そしてソニーはロボット開発をやめた」」、日経ビジネスオンライン、2016年6月13日、14日
2)「「ソニー、ロボット撤退の舞台裏」と題する大鹿靖明記者による一連の詳細な調査報道記事」、朝日新聞、2014年5月1日
3)原田節雄(元ソニー社員)、「ソニー失われた20年―内側から見た無能と希望:第6章 愚弄の山を築く人々」、さくら舎、2012年
4)清武英利、「切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか」、講談社、2015年
5)「ソニーaibo事業トップに聞く」、日経テクノロジーオンライン、2018年1月18日