トヨタ自動車は、日本を代表する“ものづくりの雄”である。数ある民生用工業製品の中で最も複雑な製品と言えるクルマを、高性能かつ高品質に、しかも低コストで大量生産する、世界屈指の力を持っている。「カイゼン」「かんばん」「ジャスト・イン・タイム」、そして「トヨタ生産方式」といった世界のものづくり企業が範とする同社が編み出した開発・生産の手法は、すべて競争力の高いクルマを生産するために編み出されたものだ。そして、同社が長年にわたって育成してきた系列企業は、同社が最も効率的に生産できるように最適化されてきた。
その根っからのメーカーであるトヨタが、移動、物流、物販など多目的に活用できるモビリティー・サービスの立ち上げに注力すると発表した。ものづくりから、ことづくりへの流れは時代の趨勢。しかしこの転身は、理科系学生の文科系学部への転身のようなものだ。同社は、企業文化も運命共同体である系列会社も、すべてクルマを生産することを前提に育んできた。しかも、転身への着手は、決して早いわけではない。大丈夫なのだろうか。
「MaaS(Mobility as a Service:マース)」ビジネスへと取り組みを発表したトヨタが、将来どのようなビジネスを展開しているのかを考え、その波及効果とそこで生まれる新たな商機について議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、Grossbergの大山 聡氏である。同氏は、トヨタ生産方式などトヨタの強みがMaaSビジネスでは基本的に役立たないことを指摘し、MaaSとスマートシティーとの関連を考察して、同社が採るべきビジネスの形を提言した。
Grossberg 代表
