結局は「ハコ物商売」? トヨタ提唱のMaaSプラットフォーム
[トヨタがサービス業になると、何が変わるのか]回答者:服部コンサルティング インターナショナル 服部 毅氏
「モノづくり」から「コトづくり」へ。こうしたスローガンを掲げて、ビジネスのイノベーション創出を目指す企業は多い。実際、IT業界ではこうした指針に沿って、ビジネスモデルの転換した企業は多い。ただし、大胆なリストラやM&Aを行うことに慣れた欧米の企業に比べて、経営資産と事業構造の流動性に劣る日本企業は、こうした転身が得意ではない。ビジネスモデルの転換の重要性は分かってはいるが、現実的には大なたを振るうことができず悶々とした状況が続くことが多々ある。
トヨタ自動車がこれから取り組むMaaS(Mobility as a Service:マース)は、その立ち上げ過程でこうしたジレンマを抱える可能性が高いのではないか。現時点での同社は、押しも押されぬ超優良企業だ。人もうらやむこの状況を好き好んで捨て去り、しかも他業界と比べても突出して事業構造の急変が難しい今の自動車業界で転身を図るには、勇気と英邁な考察に裏付けられた戦略が欠かせない。本当ならば、じっくりと腰を落ち着けて取り組みたいところだが、MaaSの競合が俊敏さと柔軟さに長けたIT企業であるため、うかうかしてはいられない。できれば、新しいビジネスが既存のビジネスの強みを継承できるものであるのが理想なのだが・・・。
MaaSビジネスへの取り組みを発表したトヨタが、将来どのようなビジネスを展開しているのかを考え、その波及効果とそこで生まれる新たな商機について議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。トヨタが発表したMaaS向けプラットフォーム「e-Palette Concept」の価値を読み解き、そこに垣間見える同社の意図を考察した。
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】トヨタなど自動車メーカーがMaaSを事業化する上での課題、挑戦すべきことは何だと思われますか?
【回答】 売上台数至上主義からの脱皮、プラットフォーム(車両)提供ではなくサービスプロバイダー(脱製造業)への職種変更の覚悟
【質問2】自動車メーカーがMaaSの事業開発を加速することで、自動運転や電気自動車の開発にはどのような波及効果があると思われますか?
【回答】 開発を大幅に促進する効果がある。顧客の要望への迅速な対応ができる
【質問3】自動車メーカーがMaaSの事業化によって、どのような企業にどのような新たな商機が生まれると思われますか?
【回答】 あらゆる企業にさまざまな商機が生まれるだろう。しかし・・・
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