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【回答者後記】MaaSは、自動車台数を減らしてクリーンなスマート社会を作る活動

 私が昨年訪れたオランダ南部のアイントホーフェン(Eindhoven)市は、名門Royal Philips社発祥の地であり、人口当たりの特許出願数が世界一多いハイテク都市(OECD調べ)である。

 地元のEindhoven工科大学(TU/e)では学生やOBが次々とMaaSを実現するために起業している。欧州では、EU(欧州連合)および各国政府を挙げて環境対策でEVシフトとカーシェアリングを加速させていることが背景にある。EVは擦り合わせ技術の塊のような「内燃機関(エンジン)」を、容易に入手できる「電気モーター」に変えた。自動車産業への参入の敷居が極めて低くなってきている。

 TU/eの4名の学生が設立したEVのカーシェアリング・サービス企業、オランダのアンバー・モビリティー(Amber Mobility)については既に紹介した1)。2021年までには、カーボンファイバー素材を用いた、独自デザインの完全自動超軽量EV(世界一低燃費のシェアリング専用車)の実用化を目指している。

 大学名をもじったTU/ecomotiveという自動車クラブは、バイオ複合材料を使って世界最軽量のEVを開発中である。ガソリンの代わりに人工光合成で大量生産した蟻酸を使い、その分解で水素を発生させ250kWの電力を得て公共バスを動かそうという大学生集団“Team FAST”(Formic Acid Sustainable Transportation、蟻酸を使った持続可能な運輸)も実用化目指して奮闘している。 

 いずれの学生起業家たちに共通する思想は、Eindhovenの街から、自家用車の台数を徹底的に減らして、排気ガスをまき散らさないシェアカーと公共バスを組み合わせて、(1)交通渋滞のない、(2)公害のないクリーンな都市を目指しているということだ。環境対策のモデル都市として、世界のお手本にすると学生たちは意気込む。(3)街の中心の巨大な駐車場施設も大幅縮小してその土地を市民のために有効利用してスマート都市を目指せるので、「一石三鳥」の取り組みである。

 クルマの売り上げを大幅に減らすような発想は、既存の(特に日本の)自動車メーカーでは受け入れられないだろう。売上台数至上主義の自動車メーカーは、うかうかしているとMaaS時代の「配車」ならぬ「敗者」になってしまいそうだ。

■参考文献
1) 服部毅;「テクノ大喜利【エンジン車廃止の潮流に商機を探る】愛せないクルマはいらない、業界を超えて愉快なEVを作ろうー回答者後記:参入障壁が低くなったEVは、学生にも起業のチャンス」。 日経テクノロジーonline  2017年9月27日