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量子コンピューターの構造

 量子コンピューターの構造だが、まず必要なのは、通常のコンピューターのビットに相当する量子ビット(キュービット)。量子は、2つの状態を併存でき、確率的であるので、量子コンピューターに使用する量子ビットは“0”が70%、“1”が30%というような状態を表現できる性質がある。また、量子は計測するまでは確率的な状態であり、どうなっているのかは確定しておらず、一度計測したらその状態に固定される。

 次に必要なのは量子ビットを一定の規則で別の状態に変換する量子ゲート。これは半導体の論理ゲートに当たり、量子ビットと量子ゲートを用いて演算を行う。そして、量子コンピューターを特定用途に活用するために必要なのがアルゴリズムであり、そのアルゴリズムを量子コンピューター上で動作させるために必要なのが量子プロブラミング言語である。

半導体業界の貢献

 ここまでで、私が回答を書き進める上での、ベースとなる認識の説明が終わったので、頂いたお題について順番に解説していく。半導体業界が量子コンピューターの実用化と産業化で貢献できる領域について、量子コンピューター固有の構成要素である(1)アルゴリズム、(2)プログラミング言語、(3)量子ゲート、(4)量子ビットの順に解説する。

プログラミング言語の開発での貢献

 アルゴリズムは、デジタル型では天才のひらめきの創造物であり、業界として取り組むようなものではないというのが私の認識である。半導体業界にいる天才が何か考えつく、というようなことはあるかもしれない。アナログ型については、今、色々な企業がD-Waveをタイムシェアして有益な活用方法を考えている。

 プログラミング言語は、アナログ型では、米マイクロソフト(Microsoft)などが既に開発していて、2、3の系統に分かれている。半導体業界、ハイテク業界が蓄積してきた知見が活用できるであろう。ここが貢献できる第1の領域。

量子ゲートと量子ビットの開発での貢献が本命

 量子ゲートの開発は、量子ビットの開発と密接に結びついている。量子ビットは、量子ゲートが構成できるものでなくてはならず、両者の開発は密接不可分なのである。量子ビットの必要条件は、ディヴィンチェンツォの定義によると以下の6点になる。

1. 初期化可能
2. 読み出し可能
3. 量子ゲートが構成できる
4. 拡張性が高い
5. 重ね合わせ状態崩壊(デコヒーレンス)までの時間が長い
6. 固定量子ビットと弾道量子ビットを正確に相互転換できる(できた方が良いが、必須ではなく、この条件は飛ばされていることが多い)

 これらの条件を満たすことができる量子ビットの候補として挙げられているのが、以下のものだ。

A. 核スピン:NMRをはじめ研究の歴史が長く、既に小規模な動作実証もされている。拡張性に乏しい。
B. 光子:デコヒーレンスまでの時間が長く、量子ゲートも波長板などで製造できる。集積化とメモリーの構築が難しい。
C. 半導体量子ドット:集積化が可能で拡張性にも富むが、量子ビット間の相互作用が強く、デコヒーレンス時間が長い。
D. 半導体不純物準位:集積化が可能で拡張性にも富むが、位置制御が難しい。

 どの方式も一長一短があり、実用化に向けて、さまざまな模索をしているところである。Bについては、半導体やMEMSで培った微細加工技術を応用することで、高集積化に貢献できよう。CとDは半導体であり、これは今までの半導体の微細加工技術と材料系が応用できる。日本でも、科学技術振興機構、理化学研究所、大学などから、半導体の製造や欠陥解析で培った知見をベースに、量子ビットの試作やデコヒーレンスの原因分析と対策によるデコヒーレンス時間の長期化、量子ビットの高集積化などといった成果が発表されている。