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 現在の半導体メーカーは、何を売って収益を上げているのか。もちろん、チップを売って収益を上げている。

 IT企業や近未来の自動車メーカーは、工業製品であるコンピューターや自動車の販売ではなく、サービスを売って収益を上げる体制へと移ってきている。ところが、今のところ、半導体メーカーはチップの販売以外の主だった収益源はない。これは、半導体業界の巨人である米インテル(Intel)や韓国サムスン電子(Samsung Electronics)も同様だ。唯一サービスで収益を上げていると言えそうなのは、TSMCのようなシリコンファンドリーくらいではないか。ただし、TSMCにしても、チップの生産量に応じて収益が増減するわけだから、サービス業といっても、製造業の収益構造と大きな変わりはない。

 量子コンピューターのビジネスは、工業製品を販売する従来のビジネスモデルで対処できる商品なのだろうか。従来型コンピューターのビジネスでさえ、収益はサービスで上げることが王道になっている。2018年2月のテクノ大喜利のテーマ「独自チップ至上時代が到来、うちはどうする?」で議論したように、独自チップを開発しながら、収益はサービスで上げる企業も出てきている。こうした中、半導体メーカーは、量子コンピューター関連ビジネスにも対応できる、多様なマネタイズの手段を持つことも考えなければならない時期になってきているのではないか。

 量子コンピューターの産業化に伴う、半導体産業の貢献余地と新市場としての価値、また波及効果について議論している今回のテクノ大喜利。4番目の回答者は、慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、量子コンピューターという演算原理もシステム構成も違うコンピューターの特徴を考察し、収益を上げるためのビジネスモデルの考え方を提示した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員
田口 眞男(たぐち まさお)  1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】量子コンピューターの実用化と産業化に、半導体産業はどのような貢献ができると思われますか?
【回答】科学技術的貢献はできるが、日本で貢献できる企業は限られており、半導体産業としては苦しい
【質問2】量子コンピューターの普及は、半導体ビジネスの成長に、どのような効果をもたらすと思われますか?
【回答】当面半導体ビジネスの成長にはあまり貢献しないが、何かをきっかけにして大ブレークする可能性はある
【質問3】量子コンピューターの活用で、半導体産業のビジネス運営や技術開発には、どのような波及効果があると思われますか?
【回答】経営の垂直統合化の動きを誘発