経営難に陥っていたシャープが、すっかり息を吹き返した。2016年8月に債務超過で東証2部に転落した同社は、その後、鴻海精密工業の傘下に入り、たった1年4カ月で東証1部に復帰。2016年度の下期を境に経常利益は黒字化し、2017年度には通年で純利益でも黒字化した。
苦境のどん底にあった同社が身売り先を探す過程では、技術の国外流出を懸念する声に応じた産業革新機構の主導による経営再建が有力視されていた。しかし同社は、その道を選ばず、鴻海傘下入りを決めた。当時は、そんなシャープに対して、不安だけではなく批判の声さえあった。
ところが、業績回復が鮮明になった現在、鴻海からやってきた戴正呉社長の手腕を絶賛する声があふれている。郭台銘董事長に次ぐ鴻海のナンバー2である戴氏は、シャープの社長に就任して以来、部材の共同調達によるコスト削減などの構造改革、既存事業を切り売りすることなく融合を推し進める「One SHARP」と呼ぶ理念の徹底を進めてきた。そして今では、新卒採用は2.2倍に増え、従業員の年間平均給与は17%増加し、株価も約4倍になった。
過去に数々の世界初、日本初の商品を生み出してきたシャープは、日本の電機メーカーの中でもチャレンジ精神にあふれた企業だと言える。そして、これからの同社は、AIとIoTを合わせた「AIoT」と「8K」で、シャープらしい製品を投入していきたいという。ただし、現時点ではそれを具体化した製品は、極めて断片的にしか見えていない。
こうしたシャープの復活劇と、その結果として同社が得た未来の行方を考察することによって、多くの日本企業に向けた貴重な示唆が得られることだろう。今回のテクノ大喜利では、復活したシャープのこれまでの経緯と現状から得られる教訓について考えた。最初の回答者は、微細加工研究所の湯之上 隆氏である。同氏は、客観的な事実から同社の業績を再確認して、本当にシャープが復活したと言えるのか再検討した。
微細加工研究所 所長
