「本来の強みである『オンリーワン』を常に求める社風を捨て、柄にもない『ナンバーワン』を液晶で追求したことが、シャープ凋落の主因」。そんな有識者の論説を聞いたことがある。
かつてのシャープの歴史は、他社が扱っていない商品こだわり続けてきた歴史でもあった。社名の由来になったシャープペンシルをはじめ、電子レンジ、LSIや液晶、太陽電池を使った電卓、ポケットコンピューター、携帯型翻訳機、液晶付きカムコーダー、そして液晶テレビなど、とにかく日本初、世界初の商品が多い。
いの一番に市場投入するのに、最終的にはナンバーワンにならない。このことは、もちろん同社社員は悔しかっただろうが、同社の愛すべき点でもあった。それでも、次から次へと新しい商品を生み出すバイタリティーは十分賞賛に値する。まさに同社は、いつまでもベンチャーの心を持った大企業だったのだ。
日本の電機メーカーの多くは、事業部が違えば、社員同士が会話する機会はほとんどない。ところがシャープは、組織間の壁が驚くほどない。シャープには、新しい取り組みをするとき、組織を超えて各分野のキーパーソンを集める「緊急プロジェクト(通称、緊プロ)」呼ぶ集まりが招集される。そして、他社に先駆けるオンリーワン商品の多くが、この緊プロから誕生した。シャープには、こうしたオンリーワンの商品を生み出す体制が今でもある。
シャープの復活劇を勝手に評価し、復活した同社が得た未来について議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、東京理科大学大学院の関 孝則氏である。同氏は、経営上の苦境を脱し、傷が癒えてきた今、シャープ本来の美徳をどのように生かすべきか、同社が注力すべきサービス事業を中心に論じた。
東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
