PR

 自動運転車の開発は、IT業界の企業によるリードの下で進められている。実現の鍵を握る技術が、人工知能(AI)や通信技術といった、従来の自動車メーカーのコア技術とは別の部分にあるからだ。こうした技術開発の焦点の変化に対応すべく、多くの自動車メーカーや電装メーカーが、IT企業や半導体メーカーとの協力関係を強化している。

 そもそも、にわかに自動運転車の実用化に現実味が帯びてきたのは、米グーグル(Google)による自動運転車の開発が明らかになってからのことだ。それまでの自動車業界は、高度道路情報システム(ITS)を活用して、ドライバーの運転を支援する情報を提供する仕組みの構築にまい進していた。自動運転は、遠い未来の夢だったのだ。

 自動運転技術の開発は、まさに日進月歩、IT業界ではおなじみのドッグイヤーのペースで進んでいる。10年先の製品に搭載する部品の商談を今行う、自動車産業の伝統的な仕事の進め方とは明らかに異質な状態である。自動車業界の企業は、これまでの仕事の進め方では主導権を取ることができず、IT業界の作法、IT業界の仕事のペースで技術開発を進めるようになった。これまで自動車業界が慎重に技術開発を進めてきたのは、そのペースが安全性を確保するために必要だったからではなかったか。人の命を機械に託す自動運転車の開発で、ドッグイヤーの進化ができるのだろうか。

 自動運転車による死亡事故の発生を契機に、あらためて自動運転車の安全について考えている今回のテクノ大喜利。5番目の回答者は、慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、自動運転車の安全性にあらためて注目が集まっている今こそ、自動車業界が培ってきた安全確保に向けた技術開発の作法の強みを打ち出すべきと論じている。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員
田口 眞男(たぐち まさお)  1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】現在の自動運転車の技術開発の動きを見て、危うさを感じる部分はありますか?
【回答】いま世の中を変えている天才たちは野心家にならざるを得ない
【質問2】自動運転車の安全性を一層高めるため、自動車業界が注力すべきことは何でしょうか?
【回答】トレーサビリティーを高くすること
【質問3】安全性を高めるため、電子業界やIT業界が注力すべきことは何だと思われますか?
【回答】信頼性に関する考え方の擦り合わせ