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 一般に、安全性の確保や信頼性の向上と、開発機関の短縮やコスト削減は、トレードオフの関係にある。これは、工業製品だけにある傾向ではない。Webに掲載するコンテンツも、人手を掛けて内容や表現を重ねてチェックすれば、情報の信頼性と表現の正しさは向上する。だから、日経 xTECHのようなマスメディアは、冗長なチェック体制を採用している。コストと手間を掛けているからこそ、誰もが情報発信できる時代になってもマスメディアとして存在できている。

 自動車業界には、安全性の確保や信頼性の向上に向けた、他の業界から見れば冗長にも見える開発や生産の手順がある。中には、なぜその手順を踏む必要があるのか、手順を決めた人が既に職場を去ったため、謎の工程になっている例もあるという。手順を決めた根拠が残っていないことは問題だが、そうした手順の1つひとつが、クルマという安全性の確保が最優先される商品を作るための知恵だと言える。その重要性は、自動運転の時代になっても、消えてしまうとは思えない。中には、本当にムダな手順も残されている可能性があるが、その存在意義を1つひとつ精査することが大切になるのではないか。

 自動運転車による死亡事故の発生を契機に、あらためて自動運転車の安全について考えている今回のテクノ大喜利。6番目の回答者は、Grossbergの大山 聡氏である。同氏は、機械に運転を任せる自動運転車だからこそ重要性を増す、自動車業界が培ってきた安全性確保に向けた知恵の価値について論じている。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる)  1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】現在の自動運転車の技術開発の動きを見て、危うさを感じる部分はありますか?
【回答】危うさを感じる部分がある
【質問2】自動運転車の安全性を一層高めるため、自動車業界が注力すべきことは何でしょうか?
【回答】従来通りの姿勢・体制を引き続き重要視すること
【質問3】安全性を高めるため、電子業界やIT業界が注力すべきことは何だと思われますか?
【回答】自動車業界がこれまで重要視してきた姿勢・体制をより尊重すること