一般に、安全性の確保や信頼性の向上と、開発機関の短縮やコスト削減は、トレードオフの関係にある。これは、工業製品だけにある傾向ではない。Webに掲載するコンテンツも、人手を掛けて内容や表現を重ねてチェックすれば、情報の信頼性と表現の正しさは向上する。だから、日経 xTECHのようなマスメディアは、冗長なチェック体制を採用している。コストと手間を掛けているからこそ、誰もが情報発信できる時代になってもマスメディアとして存在できている。
自動車業界には、安全性の確保や信頼性の向上に向けた、他の業界から見れば冗長にも見える開発や生産の手順がある。中には、なぜその手順を踏む必要があるのか、手順を決めた人が既に職場を去ったため、謎の工程になっている例もあるという。手順を決めた根拠が残っていないことは問題だが、そうした手順の1つひとつが、クルマという安全性の確保が最優先される商品を作るための知恵だと言える。その重要性は、自動運転の時代になっても、消えてしまうとは思えない。中には、本当にムダな手順も残されている可能性があるが、その存在意義を1つひとつ精査することが大切になるのではないか。
自動運転車による死亡事故の発生を契機に、あらためて自動運転車の安全について考えている今回のテクノ大喜利。6番目の回答者は、Grossbergの大山 聡氏である。同氏は、機械に運転を任せる自動運転車だからこそ重要性を増す、自動車業界が培ってきた安全性確保に向けた知恵の価値について論じている。
Grossberg 代表
