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 「出る杭は打たれる」という言葉は、上位に立つ者が下位に立つ者の行動を制するときに使う言葉だ。では、打つ側と打たれる側の力が、実は拮抗していた場合にはどうなるだろうか。打たれた杭は、引っ込むことなく、逆に打てば打つほど出てくることになるのではないか。

 かつての日米貿易摩擦当時の日本は、まさに「出る杭は打たれる」の状態だった。当時、米インテル(Intel)のCPU「x86」の互換チップの開発を目指していた日本の半導体メーカーがあった。しかし、不公正な貿易への対処と報復を目的とした米国の「通商法301条」が強化され、「スーパー301条」となったことなどを受けて、その企業はさらなる制裁の激化を避けるため開発を取りやめた。後日、「Windows 95」の発売によってパソコン市場が急拡大していたころ、当時の同社の役員に、「どうしてx86互換チップ事業をやめてしまったのか」と聞いたことがある。その役員は、「君子危うきに近寄らず」とだけ答えた。Intelの「Pentium」が独占市場で我が世の春を謳歌していた時だったから、答える姿は悔しさの中での精一杯の強がりのようにも感じた。

 今、米国は、相手を日本から中国に変えた苛烈な貿易摩擦を繰り広げている。果たして今回の相手は、打てば引っ込む杭なのだろうか。ZTEの取引停止事件をキッカケにして、あらためて日本の電子産業の地政学的立ち位置を考えている今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、制裁対象としての中国のマインドや特性を洞察し、現在の米中ハイテク貿易摩擦の行方を見通した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし)  大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経xTECHなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】米中貿易摩擦、とりわけハイテク産業での摩擦で、日本企業にはどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】蚊帳の外の日本勢には当面は大きな影響は及ばないと思う
【質問2】ZTEとの取引停止のような、ハイテク産業での米中の目に見えた制裁措置は、これからも続くと思われますか?
【回答】制裁措置は今後も続くと思う。ただし政治的な妥協はありうる
【質問3】日本企業は、大口顧客である中国企業の事業が突然停止する可能性に対し、どのように備えるべきだと思われますか?
【回答】1社あるいは1国のみへの納入依存は避け、グローバルなビジネスを心掛ける