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 長期的な視野で見ると、半導体メーカーや電子部品メーカーが注力する市場が、一般消費者のニーズを満たすことを第一とする民生機器向け市場から、社会課題の解決に資する技術を求める自動車や産業機器向け市場へと移ってきている。第5世代移動通信システム(5G)は、スマートフォンのような民生機器向け技術かと思いがちだが、その実、期待されている応用先はIoTだったり、コネクテッドカーだったりと、社会課題の解決に向けた技術であるといえる。

 こうした、社会的な意義が強調される用途の技術を立ち上げる時、多くの取り組みが民間主導で進められる米国と、国家主導で市場の形を変えていく中国では、どちらがスムーズにことが進むのだろうか。最終的に消費者が喜ぶかどうかは別として、市場を変えるスピードとダイナミックさは、後者の方に分があるのではないか。

 市場自体が巨大になった中国だが、その市場のかたちを国家が決めやすい状態は維持されているため、技術の標準化競争で強力な力を発揮する可能性がある。この点は、今後の世界の技術力や市場先導力のパワーバランスを考えるうえで、じわじわと効いてくるかもしれない。

 ZTEの取引停止事件をキッカケにして、あらためて日本の電子産業の地政学的立ち位置を考えている今回のテクノ大喜利。4番目の回答者はGrossbergの大山 聡氏である。同氏は、5Gの標準化における米中での主導権争いに着目し、その側面からZTE事件を洞察した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる)  1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】米中貿易摩擦、とりわけハイテク産業での摩擦で、日本企業にはどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】日系半導体メーカーへの影響は限定的だが、部品メーカーには少なからぬ影響が及ぶと思われる
【質問2】ZTEとの取引停止のような、ハイテク産業での米中の目に見えた制裁措置は、これからも続くと思われますか?
【回答】1つひとつの制裁は長期化しないだろうが、互いに二の矢、三の矢を放ち合う可能性がある
【質問3】日本企業は、大口顧客である中国企業の事業が突然停止する可能性に対し、どのように備えるべきだと思われますか?
【回答】生産拠点や流通経路の選択肢を増やすことで、事業への影響の最小化に努めるべき