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 「生産ラインでの改善点が見つからないと、むしろ不安になる」。トヨタ自動車の生産技術のエンジニアから、このような話を聞いたことがある。これに類した話は、同社のさまざまな部門から聞かれ、トヨタのカイゼン文化を作り上げる同社社員のDNAだと説明されることが多い。長きにわたって業界をリードし続ける企業には、経営者以下社員の隅々まで、企業文化をかたちづくるDNAが必要なのであろう。

 エレクトロニクス業界、特に半導体メモリーやディスプレイの分野で、長期間にわたって巨人であり続けている韓国サムスン電子(Samsung Electronics、以下Samsung)はどうか。少なくとも、同社会長の李健熙(イゴンヒ)会長に関しては、折々に発せられる同氏の発言を聞く限り、「危機感を感じていないと、むしろ不安になる」といった感覚を持っているように思える。どんなに好調なときにも、どんなに好況の下でも、いつも危機感を訴え、それを解消するための方策を求め続ける。

 ただし、同氏の感覚は、Samsung全体の文化として社員全体に刷り込まれているだろうか。そもそもカリスマである同氏は病床にある。そして、「先を行く日本と追い上げる中国の間でサンドイッチ状態になっている状況で、確かな活路を自ら開く」という、同氏が10年前に出した宿題には未だ回答が得られていない。それどころか、メモリー市場が未曾有の好況の中にあるため、圧倒的トップ企業である同社社員が厭戦気分に浸ってもおかしくない状況だ。

 投資王Samsungの目線から、好況が続くメモリー市場の位置付けと同社の投資資金のやり繰りが同市場に与える影響を議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、世界一の半導体メーカー、世界一の投資王となった同社の、実は好材料ばかりでとはいえない現況を論じた。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし)  大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経xTECHなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】現時点でのSamsung Electronicsは、メモリービジネスでの投資が調整局面にあるように見えます。これは正しい判断だと思われますか?
【回答】短期的に高利益を維持するための正しい判断
【質問2】Samsung Electronicsが取り組むビジネス領域(半導体以外も含めて)の中で、現時点でもっと積極投資すべきと思われる分野はどれですか?
【回答】半導体分野では「非メモリー事業」、それ以外では、今後成長が期待できる「未来成長事業」
【質問3】巨額投資案件を数多く抱えるSamsung Electronicsの、メモリービジネス専業のメーカーに対するメリットもしくはデメリットは何だと思われますか?
【回答】デメリットはない。メモリー不況時期には非メモリー事業(半導体以外を含む)で利益を確保できるメリットがある