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 「間尺に合う」、または「間尺に合わない」という言葉がある。ビジネスの世界では、自社の経営リソース(ヒト・モノ・カネ)の大きさに合ったビジネスであるか否かを論じるときによく使われる言葉だ。巨大企業が、小さなビジネスを行うことはもちろん可能だ。しかし、巨大企業で抱えている設備や人材を生かすため、また食わせていくためには、相応の大きさのビジネスをしないと力を削がれる結果になりかねない。このため、巨大企業は巨大企業ならではのビジネスをする必要が出てくる。

 韓国サムスン電子(Samsung Electronics、以下Samsung)は、30万人以上の従業員を抱え、214兆4900億ウォン(約21兆円)もの売り上げがある巨大企業だ。そして、その利益の約8割を半導体事業で上げ、その大部分がメモリー事業で稼いでいる。今や、世界一の売上高を誇る半導体メーカーになったが、中核事業であるメモリー事業は今後中国メーカーとの熾烈な競争になることは確実だ。Samsungは、圧倒的な強さを誇っていた液晶パネル事業でトップの座を中国企業に奪われ、もはや奪還をあきらめているような状況だ。メモリー事業の現在の状況には、どこか既視感がある。

 メモリー市場はこれからも成長していくことだろう。しかし、同社のシェアは確実に削られていくのではないか。すると、Samsungにとっては、現在の企業体を維持・成長させるための、メモリー事業に匹敵する、つまり同社の間尺に合う新規事業が必要になってくる。その育成と転換は、メモリー事業での稼ぎがきっちりとあるうちにしておく必要があろう。それは何なのか。そして、その新市場に、同社の巨大な経営リソースをいつ動かすことになるのか。

 投資王Samsungの目線から、好況が続くメモリー市場の位置付けと同社の投資資金のやり繰りが同市場に与える影響を議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、Samsungにとって間尺に合うビジネスとは何か検討した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員
田口 眞男(たぐち まさお)  1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】現時点でのSamsung Electronicsは、メモリービジネスでの投資が調整局面にあるように見えます。これは正しい判断だと思われますか?
【回答】 Samsungにとっては正しいが、その腹の内は…
【質問2】Samsung Electronicsが取り組むビジネス領域(半導体以外も含めて)の中で、現時点でもっと積極投資すべきと思われる分野はどれですか?
【回答】電気自動車?
【質問3】巨額投資案件を数多く抱えるSamsung Electronicsの、メモリービジネス専業のメーカーに対するメリットもしくはデメリットは何だと思われますか?
【回答】製造コストの低さがメリットだが、余りに拡大戦略を取ると資金の取り合いに